どうやら私は幸村に気に入られているらしい。仁王や丸井が言うには、‘気に入られているんじゃなくて好きなんだ’という事らしい。
普通の子なら嬉しくなるのだろうが、私は幸村とは小学校からの仲で特にそういう感情もないので別に嬉しくもなんともない。友達であればそれでいいという感じだ。
授業終了のチャイムが鳴り教室から出ると、幸村がロッカーから教科書を取り出しているのが見えた。
「(あ、幸村。…ひざかっくんしてやろ)」
「ひざかっくーん!」
「え?」
せっかく気づかれずに後ろに回れたのに膝の位置が合わずにかっくん出来なかった。
「…何してんの?」
「ひざかっくんしようとしたのに膝乃位置合わなかった」
「それは残念。まあ、俺は足長いからね」
「私だってそこそこ長いんだからね!背もあるし!」
ちなみに164p。足もどちらかと言えば長い方だ。
「俺の方が背高いよね。」
「そりゃあ、」
そうだけど、と言い返そうとしたけど幸村の背が高いのは事実だし足が長いのもそうだ。
でもここで引くわけにはいけないのだ!
「そりゃあ?」
「そりゃ、」
「……」
「そりゃー!」
ぽすっと小さな音を立てて私のグーパンチが幸村の肩に当たった。その瞬間幸村の手がスパーンと私の頭を叩いた。
「…うん。ごめん、つまんない事言って」
「分かればいいよ」
「じゃあ、移動教室だからーじゃあ音ー」
「あっ、待って!」
幸村の声に振り返ると、手を引かれて彼の胸の中へ収まった。
「え、何幸む…って、近いっ!」
そう言うと幸村の顔が今以上に近づいてきて私は咄嗟に目を瞑った。すると唇に何やら柔らかい感触と周りにいたらしい人達(主に女子)の悲鳴が聞こえてきた。
それが幸村の唇と気付くのにそう時間はかからなかった。
私は急いで幸村から離れた。
「え、あの…は?何これ!?」
「ん?何でもない。……大好き」
爽やかな笑顔と共にそう言って幸村は去っていった。
え?
私幸村にキスされたの?
何で?
…あ、私の事好きとか言ってたっけ?あれ本当だったの?
え、…ええ!?
いきなりの事に私の頭はショート寸前だったけど、自分の顔が真っ赤になってることと幸村が気になって仕方ない事だけは分かった。
((これであいつも俺の事意識してくれたかな?))
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アピールしてもなかなか気付いてくれない鈍感ヒロインちゃんに意識してほしくてちゅーしちゃった幸村くん
久しぶりに書いたけど大丈夫だろうか…?