「先輩、頑張ってください」
ー頑張ってるよ
「先輩なら出来ます」
ーそんなの分かんないよ
「絶対受かりますよ」
ーそんな保障どこにあるの?
受験だから、と言って暫く会っていなかった長太郎に久しぶりに会った。
会おうと言ってきたのは長太郎の方。私も1日くらいと思ってそれを承諾した。
けど、いざ会ってみたら、高等部に進級するだけじゃんとか、長太郎なんて苦労しなくても高校行けるじゃんとか、いいな2年生はみたいなそんな軽いものじゃない愚痴がだらだらと溢れてきた。
それがいつの間にか口からこぼれ落ちていて、まずいと我に返った時にはもう一通り言った後だった。
ここで冒頭に戻る。
長太郎は私のオチもない、長太郎を傷つけるだけの言葉をただただ聞いてくれていた。そして今まで言われなかった応援ももらえた。大人達はそこに入らなければいけないという圧迫感だけを与え続けてきたから。
なのに私は長太郎の優しささえ素直に受け取れない。一度愚痴をこぼしたら、元に戻るのが恥ずかしくなってしまった。
「なまえ先輩。俺、応援してますから」
「…応援してくれたって、受かるわけじゃないんだし」
またやってしまった。本当は嬉しい。私は長太郎に背中を向けた。
「大丈夫、俺がついてます」
向けた背中からふわっと長太郎が私を抱きしめた。
「怖いんですよね、先輩。周りはみんな内部進学で、高校も決まってて、けど先輩だけ先が見えてなくて。でも大丈夫です、俺がずっとそばにいます」
…そうだ。氷帝はみんな内部進学で、外部を受験する人なんて数えるほどだ。だから私は全く先が見えてない。
そう思ったら急に涙がこぼれていた。
私が泣き始めたと分かったのか、長太郎は私の向きをくるっと変えて、前から強く抱きしめた
「今は俺がなまえ先輩を支えます。だから、来年は先輩が俺の事、支えてくださいね」
「……え?」
思わず顔を上げるとそこにはにこにこした長太郎がいた
「俺、先輩と同じ高校行きます」
「は、えっ?」
「氷帝には進みません」
「え、な、何で!?宍戸と一緒じゃなくていいの?」
「フフ!確かに宍戸先輩は大好きですけど、なまえ先輩を放っておく訳にはいきません」
「どうして…?」
「先輩を他の男の人の前にそう長くは晒せません」
そう言った長太郎の耳が赤くてなんだかこっちまで赤くなってきた気がする。
その後ににこっとはにかんで笑うもんだから、危うく英単語全部飛んでいくところだった。
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担任から私のクラスが受験に使われるって聞いてもうそんな時期かって思って当時を思い出して書いてみた
けどボロボロだなー(*_*)