今日の部活は試合形式でやるらしい。
そのせいかいつもより観客が多くて騒がしい。それに俺のクラスの家庭科で女子がクッキーやらマフィンを作ったからそれを渡す為に来とる奴がおる。ブンちゃんや赤也はどれだけ貰えるかわくわくしとるし、涼しい顔の柳生も内心そわそわしちょるみたいじゃ。
俺もしとらん訳じゃない。何せなまえちゃんが珍しく練習を見に来とるんじゃから。
きっと(十中八九)友達の付き添いじゃろうが、手にはラッピングしたお菓子が2つ。1つはブンちゃんじゃろうけどもう1つは?なまえちゃんと仲良い奴がテニス部におったろうかは?……あ、この前好きなタイプが柳とか柳生って言うとった気がする。もしかしてあの2人のどっちかか!?色々考えすぎて頭がパンクしそうぜよ…。

「おい仁王!何を考えている!集中せんか!!!」

いつの間にか参謀との試合が始まってたらしく真田に怒鳴られた。俺の足元にボールが転がっとった。ボードを見ると参謀に1点入っとって、ボーっとしてる間に入ったんじゃと思った。

「すまんのう、続けていいぜよ」

相手は参謀。なまえちゃんのお菓子の行方候補じゃけ、負けられないぜよ。

『──ウォンバイ仁王!7-6!!』

タイブレークまで持ち込んだがどうにか勝てた。

「お前が勝つとは予想外だったな、仁王。…あの子のせいか?」

そう言ってフェンスの向こうのなまえちゃんを指差した。なまえちゃんは気付いとらんみたいじゃけど指差すのは恥ずかしいからやめてほしい。

「そ、そんなんじゃなか!」

参謀に当てられたんが悔しくて否定したけど、これじゃ"そうです"って言ってるようなもんナリ。


幸村の掛け声で練習が終わり、外で見ていた女の子達が一斉にコートに入って来た。
人混みからなまえちゃんを探すとブンちゃんの所におった。──あ、1個渡した。何か喋っちょる。……俺の方指差しとる。
よそ見をしてると「仁王くん」と俺の所に来た子に声をかけられた。差し入れやらプレゼントを受け取ってるとなまえちゃんを見失ってしもうた。
手に何も持てんようになったからくるっと向き直って部室に入る。中に入って他の奴等がもらったプレゼントの山を漁ってみたがなまえちゃんのお菓子はブンちゃん以外からは見つからんかった。落ち込んだ俺はさっさと着替えて部室を出るとなまえちゃんがそこにおった。

「なまえちゃん!?」
「あ、仁王くん!あのね、これ…」

そう言ってお菓子を差し出す。

「誰かに渡しといて欲しいんか?」
「えっ?違うよ、これは仁王くんの!」
「………へ?」

驚きすぎて変な声が出てしもうた。

「さっきは人がいっぱいいたから、終わるの待って渡そうと思って。……迷惑だった?」
「そ、そんな事ないナリ!!………ありがとう」

だんだん小さくなる声も聞き取ってくれたのか、ニコッと笑うと走って行ってしまった。
俺は嬉しくて暫くその場から動けんかった。
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