1.大切なただの幼なじみ
七瀬遙。人見知り、不愛想、クール。同じクラスの友人10人に聞けば10人がこう答えるだろう。さらに言うと、なんだか近寄りがたいらしい。そんなイメージを植え付けられているハル自体、友人関係とかに興味もないのでそれらが互いに作用し合って、ハルにはこれといって親しい人がいないのだろう。
俺がそんなハルと一緒にいる理由。別にハルが可哀想だから、とか気を使っているとかじゃない。ただ、一緒にいるのが当たり前なのだ。昔から、ずっと一緒に育ってきた。だから必然的に今も一緒にいるのかもしれない。理由なんて、無いも同然だった。
しかし、そう胸を張って答えられたのはついこの間までだ。自分の気持ちに気付いてしまった今、俺は何と答えればいいのだろうか。
ハルに下心があるから、ハルが好きだから、と答えればいいのだろうが、実際問題そんな簡単にはいかない。こんな風に答える自信もないし、何よりハルに迷惑がかかる。だから嘘を吐くのは苦手だが、こう答える他なかった。
「なあ橘ぁ、お前、七瀬と仲いいよなぁ。」
「うん。」
「何でそんな仲いいんだよー」
「 んー…、幼なじみで昔から一緒にいるからかなぁー。あんまり考えたことないや。」
大切なただの幼なじみ
(まるで、自分に言い聞かせるように。)