告白
「黒子って好きなヤツいねぇの?」
…まさか、キミからそんな質問されるとは思いませんでしたよ。お陰でバニラシェイクちょっとだけ吹いちゃったじゃないですか。
「ちょ、バニラシェイク吹くなって。…で、どうなんだよ?」
キミは恋愛なんて興味無いと思っていました。どうせキミの頭の中はバスケと食事くらいでしょう?
「お前絶対今失礼なこと考えた…」
「か、考えてません。」
「ぜってー嘘だ。…ホラ、早く教えろよ」
キミって妙に鋭いとこありますよね。
あと、なかなかしつこいですね。なんで今日に限ってこんなに食いついてくるんですか。なんで目を輝かせて僕を見てるんですか。なんで僕の好きな人なんか気になるんですか。
…ちょっと期待していいんですか?
なーんて。
僕の好きな人は紛れもなくキミですよ、
火神くん。
でも、そんなこと言えるわけないじゃないですか。男が男を好きになったんですよ。キミに想いを伝えた瞬間、この関係は終わってしまいます。
クラスメイトとして、
チームメイトとして、
光と影として、
こんなに仲良くさせてもらっているのに。
だから、このままでもいいんじゃないか
って思ってしまうんです。
だってそれが一番いい方法でしょう?
「…そうですね。いますよ、好きな人。」
「…!!、っどんなヤツなんだ!?」
「素直で、誠実で…すごく素敵な人です。」
「…へー。告ったり、しねぇの?」
告白。
そんなの、出来るならとっくにしてますよ。
やっぱり鈍感。バ火神。
そんなところも好きなんですけどね。惚れた弱味ってヤツです。
「…出来ませんよ。無理だって、わかってますから。」
「………」
「迷惑になっちゃいます。今の関係が終わっちゃいます。それだけは、嫌なんです。…だから、諦めてます。」
「……ほんとにそれでいいのか?」
「…っえ、」
…そんなの、いい訳ない。
どんなに諦めようとしても、この想いはくすぶって消えない。苦しい。
「諦めるのは絶対嫌だ…って言ってたのはお前じゃねぇか。」
「……う、」
「それに、好きって言われて嫌なヤツなんていねぇよ。関係が終わるとかも、言ってみねぇとわかんねぇしな。」
「………」
「可能性が0になるのは諦めたときだろ?」
「………っ」
ずるい。
ずるいです、火神くん。
そんなの言われたら告白するしかないじゃないですか。
「…わかりました。告白します。」
「おお!!頑張れよ。」
どうやら覚悟を決めるしかないらしい。
ドクドクと激しく脈打つ鼓動。
火照ってくる顔。
落ち着け、落ち着け。
言うんだ。伝えるんだ、今。
「好きです、火神くん」
「………へ、」
凍り付いたような空気が流れる。
火神くん。
これは全部キミのせいですよ。
キミが告白しろっていったから。
変な空気になっちゃったじゃないですか。
僕のありったけの勇気を返してください。
…ああもう、どうしてくれるんですか。
黙ってないで、何か言って…
「……だから言っただろ?」
「……え?」
「諦めなくてよかったな。」
「火神く……」
気付いたら僕は火神くんの腕の中にいて。自然と火神くんの胸板に押し付けられている僕の頭は火神くんの鼓動の音を拾った。ドクドクと、僕と同じ音がした。
「好きだぜ、黒子。」
「…火神くん。」
夢みたいだ。夢なんじゃないか。そう思っても見えるのは火神くんのいつになく真面目な顔で。
僕は恥ずかしくなって再び胸板に頭を押し付けてやった。