マコト先生へ募る想い

養護教諭×生徒パロ













「真琴先生」

「なあに、ハルくん。」

「俺、先生のことが好きだ。」

「……へぇ!?」

「好き、なんだ。」


こんな風に気持ちを伝えられたらどんなに幸せだろう。いつか、言える日が来たらいいな…










「ハルくん!!ハルくんってば!!起きて、ハルくん!!」

「…んぁ?」


せっかく気持ちよく寝ていると言うのに。キャンキャンと犬が鳴いているような声が聞こえ目が覚めた。目を開けると八の字眉毛を珍しく吊り上げて怒っているこの学校の養護教諭、真琴先生がいた。


「やっと起きた!!…先生が保健室に居ないとき勝手にベッド使っちゃダメってこの前言っただろー?」


俺は今日も保健室に来ていた。目的は別に、寝るためじゃない。真琴先生に会いに来たのだ。それなのに保健室に先生が居ないという元も子もない状態だった。それで暇を持て余した俺は寝ることにした、と言うことだ。真琴先生、俺が勝手にベッドで寝ていたのは半分は先生のせいですー。

…なんてまあ、言い訳するのも面倒だからいつものように適当に返事をするんだけど。

今日は…

「眠い。」

ストレートに行こう。



「もー!ハルくん。そんなこと言って…授業サボっちゃダメだろー?」


そう言って先生は口を尖らせて怒ったような表情をしたかと思うと俺の頬をムニ、とつまみ引っ張りだした。


「…んん、いひゃい。せんせ、痛いーっ」

「ふふ、お仕置きだよハルくん。」


先生は笑顔でさらに引っ張る。痛いやら、先生のお仕置きの仕方が可愛いやら、先生に触れられているところが熱くて堪らないやらでもう、頭がぐちゃぐちゃ。訳がわからなくなっていた。痛いから離してほしいけど、ずっと触れられていたい。そんな感情が心に生まれて俺は抵抗することが出来なかった。


「…ハルくん? ごめん、つねり過ぎたね。痛い?大丈夫?」


抵抗を止め黙り込んだ俺を不思議に思ったのか、先生が顔を覗き込んでくる。さっきまで引っ張っていた頬を、今度は優しい手つきで撫でてきた。

その行動が、そのギャップが、俺の心臓を暴れさせる。それに加え息が上手く出来ない錯覚と顔の火照りまで誘発させる。ああ、もう、これだから天然タラシは。


「ハルくん怒った?」

「…っ、別に、怒ってない…」



ゴモゴモと返事が口ごもってしまった。なんだか恥ずかしくて、胸がいっぱいで、相変わらず頭がぐちゃぐちゃで先生と目を合わせられない。こんな態度じゃ、絶対先生に嫌われる。わかってる、わかってるのに…どうしたらいいか自分でもよくわからない。目の前が滲んで見えてきた。


「俺、授業戻る…」


先生の前で泣くなんて、みっともない姿見せられない。とりあえず頭の整理がつくまで、自分自身がこれからどうしたいか明確にわかるまで保健室には来ない。これがこの短時間で俺が出した答えだった。

タイムリミットは涙がこぼれ落ちるまで。俺は足早に靴を履き、ベッドサイドのテーブルに畳んで置いていたブレザーを羽織る。俯いたまま先生の横を通り過ぎてドアに手を掛けた、その時だった。



後ろから覆い被さるように先生が俺を抱き締めた。がっしりと筋肉のついた、たくましい身体が俺を包み込む。消毒液と柔軟剤の混ざったような匂いが鼻腔を擽り、初めて会った時のことを思い出させた。


「……ハルくん、またおいで。いつでも、待ってるから。」


完全に不意をつかれ呆然としていた俺を現実に引き戻したのは先生の囁き。普段と違う甘い声と耳元にかかる吐息が俺を覚醒させた。弾き出されたようにドアを開き、逃げるような形で保健室から飛び出した。




廊下を無我夢中で駈ける。顔が火照って堪らない。心臓が尋常じゃない速さで動いているし、吐息のかかったところが疼きだした。
"……ハルくん、またおいで。いつでも、待ってるから。"この台詞が頭の中で自然とリピートされている。こんなこと言われたら、行かずにはいられないだろう。



先生に対する恋の感情と
天然タラシへの恨みは確実に
俺の中に蓄積されていった。




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