養護教諭×生徒パロ

保健室のマコト先生の続編。
単体でも読めます。












揺らぐ視界、内側から殴られているような痛みが頭に走る。鉛のように重い体。熱いのか寒いのかさえもわからない。耐えられず、俺は崩れるようにその場に座り込んだ。



この岩鳶高校に入学して3日目、俺は慣れない環境のせいで体調を崩していた。朝からなんとなくダルかったが、無視を決め込んで登校した。しかし2時間目の終わりあたりから容態が急変したのだ。目立ちたくなかったが、限界を感じ挙手をして先生に伝え保健室に向かった。…のだが、場所がわからない。入学式の後に校内案内の時間があったが真面目に聞いていなかったからだ。当てもなくさ迷うも保健室は一向に見つからない。体力的にも限界で、壁に体重を預けるようにして座り込んだ。


パタパタ、足音が聞こえた。まだ授業中なのに誰だろう。丁度いいや、保健室の場所を聞こう。そう考え自分の膝に埋めていた顔を上げる。すると、ぼんやり霧がかかったような視界に映ったのは白衣を見に纏った、長身の男だった。


「ちょっ!!君、大丈夫!?」


俺に気付いたのか、駆け寄ってくる。微かに消毒液の匂いがした。どうやら、養護教諭のようだ。

返事をしようとするも上手く声が出なかった。それにこれ以上話そうとすると吐きそうになる。首を横に振るしか、出来なかった。


「うわ、すごい熱。すぐ保健室に運ぶね。楽にしてていいよ、」


養護教諭は俺を歩けないと判断したのだろう、膝裏に手を入れ背中を支えて持ち上げた。いわゆるお姫様抱っこ、と言うやつだ。

俺は身長が低い訳じゃない。むしろ高い方だし、体重もそれなりに重い。それに脱力している人は相当重いはずだ。それなのにこの養護教諭は軽々と俺を持ち上げ、運んでいる。俺は少なからずその事に驚いていた。と同時に、感じたことの無いような安心感を覚え養護教諭に身を任せた。



運び込まれた保健室は1階の隅っこと言う地味な場所にあった。こんな場所、一人だったら絶対にわからない。養護教諭が俺を抱えながら器用にドアを開ける。中は白を基調とした、ごく一般的な保健室だ。寝かされたベッドは柔らかくて、養護教諭と同じ消毒液の匂いがして。手入れが行き届いているのが感じられた。


「ネクタイと第二ボタンまで外すね。そんで熱計るから、寝てていいよ。」


物腰の優しそうな声が耳に入る。体力は限界だ。寝れるのなら寝たい。でも、それ以上にこの養護教諭に興味が湧いていた。名前は何て言うんだろう、どんな風に生徒と関わるんだろう…と。


「38℃か…熱高いね、平気?本当は帰った方がいいんだけど…独り暮らしだよね?ハルくん。」

「…なんで、知って……」


入学して3日。この養護教諭と顔を会わせたのは今日が最初だ。何で俺の名前(と言うか変なニックネーム)を知っている。担任や各教科の先生すら新入生の名前を覚えてないだろうに。…それに、家のことまで。


「ふふ、俺は何でも知ってるよ?養護教諭ってね、みんなと関わる時間は少ないでしょ。でも、せっかく同じ学校にいるんだから関わらないのは寂しいじゃん。…だからせめて、俺だけでもみんなのこと知っておこうと思って。みんなの名簿暗記してるんだ。」



先生が話しているのを聞いて、おもわず息を飲む。こんな先生今までいただろうか。生徒一人一人のことを覚えて、大切にしてくれる。俺はこの時、ただ単純にこの先生を尊敬した。


「せんせ、名前…何て言うんだ?」

「俺?…俺はね、橘真琴。よろしくね、ハルくん!」

「……真琴、先生。」

「うん!!…あ、それはそうとハルくん、今から病院行くよ。車までおんぶしてあげるから、乗って!」





これが優しくて世話焼きな養護教諭、真琴先生と俺の出会い。

…素敵だろ?





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