養護教諭×生徒パロ
まこはるテイスト。









鈍感な真琴先生は、きっとわからないと思う。生徒が理由もなく保健室に通う訳なんかないだろう。いい加減、俺の下心に気付いて。






ガラガラ。
ノックもせずドアを開けると保健室特有の匂いと、整えられた空調、何となく安心感のある雰囲気が俺を迎えてくる。その安心感の代名詞とも言える養護教諭の橘真琴先生がドアの音に気が付いたのだろう、八の字眉毛をいつもより下げ、心配そうな表情で'保健室に来た生徒'を迎えてくれる。


「……ベッド、借ります。」

「あ!ハルくんまた来たの!?」


その表情は、'保健室に来た生徒'が俺だとわかった瞬間、呆れたような、少し驚いたような表情に変化して。先生の許可も得ず保健室の一番奥にあるベッドに向かう俺を追いかけてくる。


「ねえハルくんってば!!今日はどうしたの?しんどくなった?」

「……別に。」


我ながら俺は先生を困らせる生徒、いわゆるモンスター・スチューデントだと思う。特に体調が悪い訳でもないが、ここのところ毎日保健室に通ってるし(もちろん授業は受けているが。)先生に素っ気ない態度をとってしまう。先生にとって俺は、面倒な扱いづらい生徒かもしれないが、あいにく苦情は受け付けていない。と言うのも俺自身、保健室に通う理由に気付いたのが最近の事だった。初めの方こそサボリだったが、今は違う。本当の理由―……


「ハルくーん。せめて名簿に名前と理由くらい書いて欲しいなぁ」


理由なんて、書けやしない。先生がそれに気付くまで俺からは言うつもりもないし、気付かなかったら別にそれでもいいとも思っている。それにさっきも言った様に、俺自身保健室に通う本当の理由に気付いたのは最近のことだし、戸惑っていないと言うと嘘になる。自分でもあやふやな理由を先生にぶつけたところで、相手にされないだろう。

先生が差し出してくる名簿とボールペンを渋々受け取る。七瀬遙、理由は…この前腹痛だったし、今日は熱っぽいってことにしておこう。適当に殴り書いて先生に手渡しベッドに潜り込んだ。


「あれ、ハルくん熱っぽいんじゃん。大丈夫?」

「…平気。」


もう何年も養護教諭やってるんだし、嘘か本当にしんどいかなんて一目瞭然のはずなのにいつも適当な嘘を吐いている俺に先生は本気で心配してくれる。俺はその度、先生に嘘を吐いてる申し訳なさと心配してくれる嬉しさでグチャグチャになってしまうんだ。


「体温計持ってくるから、お熱はかろっか。」

「いい。」

「へ?」

「熱なんか計らなくていい。寝てれば治る。」

「そんなことないよ、ハルくん。それに熱高かったら病院連れていかないといけないからね。」

「やだ」


拒否し続ける俺にしびれを切らしたのだろう。先生はハァ、とため息を吐き、しょうがないなと呟いた。諦めたのかと思ったが違うらしい。俺の潜り込んでいる布団を捲り、それに驚いて顔を出した俺をすかさずホールドする。そして優しい手つきで俺の前髪を払った。何事かと思い呆然としている間に先生は顔を近づけてきた。前髪を払われたことによって現れた俺の額に先生の額がくっつく。

顔が近い。近すぎて焦点が合わないくらいだ。それでも見える、先生の翡翠色の綺麗な瞳。チャームポイントの八の字眉毛はキリリと顰められていて、真剣さが伝わってくる。この少女漫画みたいなシュチュエーションと先生の姿を見て、心臓がうるさいくらいに鳴り出した。血液が顔に集まって、熱い。


「わ、熱っ!すっごい熱あるよ、ハルくん。」


顔を離すなり驚いたように言う先生。アンタのせいだよ、なんて言えないから。今日は大人しく先生に看病されちゃおうと思う。



保健室のマコト先生
(天然タラシな養護教諭)
(…一番タチが悪い。)




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一回はやってみたかった
養護教諭×生徒パロ。

出来ればシリーズ化したい。
…需要はあるのでしょうか。


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