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  1.


「おい!待てっ!!」

肺が苦しい。足も痛い。もうどれくらい走っているだろう、20分くらいかもしれないし、たった3分くらいかもしれない。だけど、とても長い間、逃げている気がする。とにかく、追手から逃げたい、そんな一心で私は走り続けていた。
しかし、ついに私の身体に限界が来た。

「っう、わ!」

建物はあるが、電灯も何もない道のため、地面がよく見えなかった私はとうとう何かにつまずいてしまった。急いで起き上がったが、後ろからやってくる2人組の男は私の背後までやってきた。

「やっと捕まえたぜ・・・」
「おい、嬢ちゃん。もう逃げられねえぞ」

そう言うと1人の男が私の腕をつかみ、引っ張り上げた。そして、そのままどこかに連れ去ろうとする。

「ちょっ!?何するの!離せ!!」

男から逃れようと身体をバタつかせたが、もう1人の男が身体を抑え込んできた。私が必死に抵抗していると、腕を持っていた方の男が私の頬を思いっきり叩いてきた。

「いっ!?」
「暴れんじゃねぇよ。ったく・・・もうその辺の空き家で済ませちまうか」
「まあ俺はそれでも構わねえぜ。久々の女だ、たっぷり楽しませてもらうからな」

私は、この後自分の身に起こることが予想できてしまった。逃げなきゃ。そう思うのに、恐怖故か身体が動かない。半ば引きずられながら、空き家に連れ込まれようとしたとき。

「おい。お前ら、ここで何してんだ?」

その声に男たちの動きが止まる。声のした方を見ると、複数の人がいた。

「なっ!こいつら・・・新選組か・・・!?」
「ああ。新選組八番隊隊長、藤堂平助だ。もう一度聞く。ここで何している?」

新選組・・・?藤堂平助・・・?現実ではあり得ない言葉が聞こえてくる。

「い、いや・・・ちょっとこの女が気分悪いって言うから、ここの空き家で休もうかって・・・なぁ!?そうだよな、嬢ちゃん!?」

そう言った男の目は、頷かないと殺すとでも言いたげだった。新選組だとか、藤堂平助だとか、向こうの男の人たちも怪しいけれど、私に残された方法は彼らに助けを求めることしかなかった。

「違う!無理やり連れ込まれそうになったの!助けて!!」
「っこの女・・・!!殺してやる!!」

私の言葉を聞いた男は、顔を真っ赤にして怒鳴り上げた。それと同時に、腰から何かを出した。

「えっ」

刀のような、いや、本物の刀だ。それを私に向けて一気に振り下ろした。
あ、死ぬ。
数秒後に来るであろう痛みに、私はぎゅっと目を瞑った。しかし、キンッという金属がぶつかり合う音で私は目を開けた。私の目に映ったのは、青、水色・・・いやそんなありふれた色ではない羽織を羽織った男の人がいた。そして、一瞬のうちに2人組の男から血が噴き出した。
殺されそうになったからか、信じられない光景を目にしたせいか、動悸が激しく、またもや胸の辺りが苦しくなった。

「こいつら、片付けといてくれ。・・・なあ、お前大丈夫か?」

私の目の前にいた男の人が振り返ってそう聞いてくる。見覚えがある顔のような気がするけれど、それどころではない。胸が、心臓が、肺が苦しい。呼吸が、うまくできない。

「なぁ、大丈夫か?・・・えっ!?」

彼が心配そうに私の顔を覗き込んだと同時に、私は倒れた。


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