「寒いなぁ」 ポケギアで呼び出すことに成功した私はグリーンをジムの裏側で待っていた。 マフラーもコートも手袋もばっちりしているのにも関わらず寒いってどういうことだ。空を見上げれば天気はあまりいいとは言えず、今にも雪が降りそうな空は余計に私を寒くさせる。ぶるりと身体を震わせて鞄からポケギアを出し時間を確かめる。 …遅い、挑戦者でも来てるのかな。 悶々とグリーンが遅い理由を考え始めた時、不意に私の頭に何かが乗った。 「待たせたな」 にかっと笑ってそのまま私の頭を掻き回すようにして撫でる。 折角セットしてきたのに。 私は慌てて頭を整えるように撫でつけた。 「で、今日はどうしたんだよ」 この男がバレンタインデーを忘れるわけない。朝からいくつ貰ったかなんて興味はないけど、沢山貰ったということはわかりきってる。それでも私は渡しにきたんだ。 「はい」 何も言わずグリーンに渡したチョコレート。 「ありがとな」 渡したチョコ片手に余裕を見せて笑うグリーンの手慣れているような感じが酷く憎らしかった。私がずっと言えなかった思いを込めて作ったのに、…なんだこいつは。精一杯作ったことが、わくわくしながら作ったことが急に色褪せて感じ馬鹿馬鹿しくなった。 「実は俺さ、今日チョコ一個しか貰わないことにしてんの」 いきなり告げられた言葉に頭が真っ白になる。 聞いてない、一個しか受け取らないなんて、聞いてない。そんなことグリーン言ってなかった。じゃあ私のも受け取ってもらえないのか。グリーン、好きなこでも出来たのかな。何だよ、…それなら先に言ってくれれば作らなかったよ。グリーンの為に作ったのに、こんなチョコ無駄じゃん。 涙が出そうになって視界がぼやける。 駄目だ、泣いちゃ駄目。きっとグリーンは心配するから。 鼻がつんとして目の奥が熱い。いよいよ泣きそうだ。 「ごめん知らなかったんだ、それなら返して」 一刻も早くこの場を立ち去りたい。涙が零れそうだ。 グリーンの手の中にある私のチョコを奪おうとすると、それは逃げた。 「返してよ」 「無理」 グリーンは私が届かないようにチョコを上に掲げて遠ざけのだ。 「なんでよ」 「俺、お前の以外受け取るつもりねーから」 そして一瞬のうちに私はグリーンに抱きすくめられた。 「好きだ」 耳元で囁かれた言葉に涙が零れた。 なんでこうもこいつは、格好いいんだ。 それからグリーンに身体を預けて私も広い背中に腕を回し呟く。 「私も、好き」 はっぴー はっぴー ばれんたいん!! ← |