「ノボリさん」


形の良いその唇動き、わたくしの名前が発せられる。それがつい先程までわたくしの唇に重ねられていたと思うと顔に熱が集まるのがわかりました。


「そんなに物欲しそうな目でじっと見て…またキスされたいんですか?」


バレていた。
自分の浅ましい視線に気付かれていたことを知り、更に顔が火照り頭がクラクラします。


「図星、ですよね」


目の前の彼女の目が厭らしい光を放ちながら確信しているかのように疑問を含ませずに言った。
確かにわたくしはもう一度唇を重ねたいと考えておりました。わたくしの浅ましい欲求が見抜かれていたと思うと羞恥で頭がおかしくなりそうです。


「ほら。して欲しいんなら言わなくちゃ」

「な、何をですか?」


わたくしの声は情けないくらいに震えていました。


「おねだりくらい出来るでしょう?」


白くほっそりとした指が顎を掬い上げ、吐息が掛かる程に顔を近付ける。いつも働いている駅で、他に誰もいないからといってこのような事をしていると思うと背中がぞくぞくと致しました。


「も、もう一度…わたくしにキスをして下さいまし」

「よく出来ました」


消え入りそうになりながらも懇願するとミンク様は満足げに口角を上げて口付けをして下さりました。
その口付けは激しく、情熱的なものでした。
ミンク様はわたくしの口をこじ開けるように自身の舌を侵入させ、口蓋をべろりと嘗め上げたり舌を絡ませたりした。
暫くして、口内を荒らすことに満足したのか押し当てていた唇を離す。すっかり息の上がったわたくしの口の端にはどちらのものが判らない唾液が垂れていて、頬に手を添えてその唾液をミンク様は嘗めとりもう一度キスをした。








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