「いつかだったか私に訊ねましたよね。過去に何があったか。今答えます」


私はシンオウの出身で、生まれつき何故か波導が使えました。そのことでいつも母と父からは暴力を受け、近所の人からも忌み疎まれました。
その頃にルカリオに出会いました。その時はまだ進化していなかったのでリオルでしたが、波導が使えた私は毎日リオルに会いに行っては日が暮れるまで話しをしていました。そして両親には秘密で拾ったモンスターボールでリオルをゲットしたのです。初めてのポケモン。心が救われたような気がしました。ああ、もう一人じゃない。リオルがいる、と。

そしてついに両親は私を売り飛ばしたのです。流れ流され結局行き着いたのが風俗店。そのオーナーがあの男です。あいつは私の支配的な部分で突飛していたカリスマ性を高く評価し、風俗店で稼いだ金を資金にして活動していた組織の新人の教育役として私を選びました。
それからというもの団員の新人達を躾ける毎日を送ったのです。昔虐げられていた分の反動だったのかはわかりませんが、人を甚振るのが好きだったので苦ではありませんでした。
しかし虚しさは段々心を蝕んでいったのです。
任務にも何回か参加させられました。
ジュゴンはその時にゲットしました。トレーナーに捨てられ、本来の生息地ではない場所にいたジュゴン。そんな姿を見て私は自分とジュゴンを重ね合わせてしまい独りにさせられなかったのです。

そんな日々が続いたある日、転機が訪れたのです。

他の組織との抗争。

どうしたものかと教育係の私は思いました。本来なら組織のためにとその戦火に身を投じるのでしょうが、生憎私には組織のためにと思えるほど愛着が無かったのです。私は戦いを眺めていました。高みの見物でした。そして私の所属していた組織は負けました。


「おい、そこのお前」

「なんでしょう?」


隣に来た男に声をかけられました。後にわかったことなのですが、この人はカントー地方のロケット団という組織を束ねるボス――サカキで、抗争相手だったのです。


「お前は何でこんなところにいるんだ」

「特に興味もなかったもので」

「面白い女だな」

「そうでしょうか。そんなこと初めて言われました」

「……お前これからどうするんだ」

「することもなくなりましたし。特に考えていません」


事も無げに言ってのけた私に男は少し悲しそうな表情を浮かべて、ぐしゃぐしゃと頭を撫でました。こんなことをされたのも私は初めてで、なんとも言えない気持ちになりました。そうしてサカキはこう言いました。


「夢はなんだ」、と。


私は考えました。

そして浮かんできたのがポケモンや人を救いたい。

――結論はナースでした。



それを伝えるとサカキは口元を吊り上げて笑いました。









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