――寒い。

ぶるりと身体が震える。

いつの間にか気を失っていたらしい。重い目蓋を持ち上げると先程までコンクリートが剥き出しになっていた床が氷でコーティングされていた。確かに寒いわけだ。

頭を持ち上げようとすると身体の様々な箇所が一斉に悲鳴を上げた。痛い。多分打撲多数に背骨に罅、肋骨が折れている。それでもなんとか頭を上げればとんでもない光景が広がっていた。

部屋は一面氷で覆われておりジュゴンが吹雪を起こしており、オノノクスとゲンガーは床に倒れうっすら吹雪の雪が積もっている。ドリュウズは血だらけであるし、ボスはもっと血だらけでその脇にはこれまた血塗れのルカリオが佇んでいた。


「ミンク様……」


掠れていたが呼ばずにはいられなかった、最愛の人の名前を。


「ノボリ、さんっ……起きたんですか」


床に座り込んでいるミンク様の声は震えており、手には鏡の破片を持ち手首に宛がおうとしていた。


「なにをしようとしていたのですか?」

「いいえ、なにも」


そう言うミンク様。


「なら、




何故そんなに泣きそうな声なのですか?」


ミンク様の手が強張ったのをわたくしは見逃さなかった。


「わたくしは貴女様がそのような声が聞きたくて助けに来たわけではありません。ましてや庇ったわけでもありません」


痛くて堪らない身体を引き摺るようにして近くまで行き、


「ただまたわたくしのそばで笑ってほしかっただけなのです」


そっと抱きしめる。


「好きです。どうしようもない程にミンクという人間を愛しているのです」




カランと手にしていた鏡の破片が凍った床に落ちた。






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