すべてがスローモーションだった。

わたくしに襲い掛かろうと飛び上がるドリュウズ。

叫んだミンク様の目は青く輝き、きらきらとした破片がドリュウズとボスに向かって飛んでいく。

そして血飛沫。

頬に生暖かい液体が付着。きっと返り血だ。

さっきまで縛られていたのが嘘かのように立っているミンク様。その足元には切断されたロープが何本も落ちている。


「あんたの相手は私でしょう」


射殺さんばかりにドリュウズを睨み付ける姿に、こんな状況下に置かれているにも拘らず胸が締め付けられてしまう。
そして付け加えられた言葉にわたくしは顔が赤くなってしまった。


「それにノボリさんを精神的にも肉体的にも痛めつけていいのは私だけですから」



その時、ボスがミンク様を指し大声で叫んだ。


「背後ががら空きだぞ、いけゲンガー」


この薄暗い部屋の闇に紛れていたゲンガーがミンク様の後ろに姿を現す。が、ドリュウズに気を取られていたミンク様はガードも間に合いそうにない。

まずい。
そう思った瞬間身体が勝手に動いた。

刹那、凄い衝撃が襲ったと思えば、壁に背中を打ちつけ一瞬息が出来なくなる。
ミンク様がわたくしの名を叫んだ。その声は泣きそうに悲痛なもので、わたくしまでもが泣きそうになった。


「オノノクス」


まだ息苦しさがあったけれどボールを投げた。

ミンク様を守りたい。

頭にあったのはそれだけだった。








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