「ルカリオ、」 いつものようにルカリオに揺り起こされて私は目を覚ました。 リビングへ行くともうノボリさんの姿は無くテーブルの上にはサラダやベーコン、目玉焼きが並べられており、いずれもサランラップが掛けられていた。きっとノボリさんが作ってくれたんだろう。今日の朝食を作る手間が省けた事に喜びを感じていると、テーブルの上に一枚の紙が乗っていることに気が付いた。 ───── おはようございます。 わたくしは先に出勤致します。 勝手ながら冷蔵庫のものを拝借して朝食を作らせていただきましたので、宜しければ食べて下さいまし。 そしてお聞きしたいのです。 本来ならば失礼にあたるかもしれませんのでお聞きしないのですが、どうしても気になったのでございます。許して下さいまし。 何故ミンク様はそんなに悲しそうな顔をなさるんですか?過去に何があったのです? ───── 読み終わった頃には私はリビングの床に座り込んでいた。 隣にいたルカリオが寄り添ってくれる。 優しいルカリオ。 そんな私の大切な大切なルカリオを抱きしめ、頬を寄せるとそれに答えるかのようにルカリオも頬を寄せた。 “どうしたのですか主、何かあったのですか” 「ごめんね、ルカリオ」 “あのような男やめてしまえばよいのです、あんな男に関わったからミンク様が苦しむのです” 「それ以上は言わないで」 抱きしめる腕の力を強めるとルカリオは話すことはなく、静かに私を抱きしめ返してくれた。 ルカリオとは生まれたときから一緒だった。だから私のことをよくわかってくれているし、こんな性格の受け入れてくれている大切な存在。ルカリオは私の支えだった。今でもそれは変わることはない。 私は波導が使えた。周りが気味悪く思うのは当然のことだと思うし、こんな性格の女を誰が好いてくれるだろうか。だから私は普段私は隠して生活している。 人に愛されたことなんて無い。私の全てを受け止めて愛してくれる人なんていない。 ノボリさんだってそうに決まっている。 私の過去を知りたがるのも興味があるから、唯それだけだ。愛してくれなんて言ってたけど私は愛を知らない。そんな人間が人を愛することなんて出来るのだろうか。答えは否だ。馬鹿馬鹿しい。でも私はあの男を偽りの形で愛するんだろう。 でも、もう偽るのは疲れた。 「疲れたよ、ルカリオ」 涙がぼろぼろと零れ出す。一度溢れ出した感情や涙は簡単には収まらなくてルカリオの肩の毛を濡らした。 “主、今日はこうしていましょう。仕事など休めばいいのです” ぽんぽんと一定のリズムで優しく背中を叩かれ、いよいよ声まで抑えられなくなる。 「ルカリオ、」 “なんですか” 「駄目な人間で、ごめん、ね」 嗚咽交じりにそう言うとルカリオは私の頭を撫でた。 ルカリオが人間だったら良かったのに。以前、私はそう言った事がある。ルカリオは困った顔をして、そうですねと笑ったことを今でも鮮明に覚えてる。もう困らせたくないから言っていないけど今でもそう思ってるのは事実だ。 ノボリさんが何を考えているかわかんない。 どうしたらいいのか、わかんないよ。 ルカリオに縋り付いて子供のように泣く私の声が部屋響いた。 あいきょう ← |