私は暫くノボリさんにマッサージをしてもらった後、どうせこんな時間では終電はもう行ってしまっただろうからと着替えとタオルを渡しお風呂を勧める。
彼も今日は泊まるつもりだったようであまり抵抗せずに脱衣所に向かった。

一人になったリビングでボールからルカリオとジュゴンを出してやる。
それから私はダイニングテーブルの上に出しっ放しにしていたブラシを取り、ジュゴンを呼ぶと足元に擦り寄せる白い頭を撫でた。ジュゴンは嬉しそうに鳴き、尻尾を揺らす。
私もその場に座り込みジュゴンをブラッシングしてあげているとルカリオも私の横に腰を下ろした。

ルカリオは波導ポケモンだ。だから私の気持ちを知るなんてことは容易いのだろう。

溜息をひとつ。

さっきは話を摩り替えるのにあからさま過ぎただろうか。でも今はまだノボリさんがいるんだから、弱さを見せるわけにはいかない。
……私は彼を利用しているのだから。

ここまで考えたところでルカリオに小突かれる。何だと思いルカリオを見るとジュゴンが私を気遣うように小さく心配そうに鳴いた。

ポケモンに心配されるようじゃ私もどうしようもないな。
自嘲気味に笑ってから心配そうな二匹に謝り撫でた。



「お風呂、ありがとうございました」


髪がまだ濡れているノボリさんは私のスウェットを着ていた。寝るときは大きめものを着る事を好む私はメンズ用のパジャマが多い。自分が普段着ているものを他人、ましてや男の人が着ているというのはやはり違和感がある。


「服のサイズ、合って良かったです」

「本当にありがとうございます」


頭を下げるノボリさん。
私も自分の着替えを手に持ち、風呂に入ることを告げ廊下に繋がるドアノブに手を掛ける。


「あ、言い忘れてました」


カーペットに座っているノボリさんの方に振り返り、にっこりを笑顔を向けて言う。


「私がいない間に変なことしたら許しませんからね」

「っ、わかりました」


びくりと肩を揺らす彼が可愛くて声を出して笑ってしまいそうになってしまう。
まあ変なことをしたとしてもリビングにはルカリオ達がいるから、私よりも先にそちらからの制裁をもらうことになるんだけど。







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