「またのご乗車をお待ちしております」


挑戦者の女性客はぺこりとわたくしに一礼してから下車。

どうもこのところ手応えがないバトルばかりで嫌気が差します。恐らくクダリもわたくしと同意見でしょう。
トウコ様やトウヤ様も最近はギアステーションに姿を現してはいません。リーグで小遣い稼ぎでもしているのでしょうか。

そしてライモンシティでわたくしも下車。


「お疲れ様です、ノボリさん」


笑顔で迎えてくれたのは恋仲になったばかりのミンク様。この関係を恋人と言えるのかは甚だ疑問ですが、わたくしはそれでもいいのです。


「ミンク様こそお疲れ様です」

「私は手当てをするだけですから。ルカリオが大半は治してくれるので」


ミンク様が傍らに控えるルカリオの頭を撫でると嬉しいそうに目を瞑る。相当鍛えられていることが動作の節々から感じられます。
それにルカリオはなつき進化なので当然と言えば当然ですが、ミンク様によく懐いております。それこそ絶対的な信頼を置いているように。
そして頭を撫でるミンク様も作り物ではないと思われるとても優しい眼差しをルカリオに向けています。

そんな眼差しを向けて頂けるルカリオをわたくしは羨ましく思いました。


「ミンク様」

「なんですかノボリさん?」

「仕事が終わりましたら今日もお邪魔しても宜しいでしょうか」


すると鞄の中から何かを取り出してわたくしの手に握らせました。

手を開いてみると銀色の鍵。


「これは…?」

「家の合い鍵です」


ノボリさんが持っていて下さいと再度鍵を握らせたミンク様の手は冷たかった。


「いつでも来ていいですから」

「それでは今夜、お邪魔しても宜しいでしょうか」


自分でも急すぎるとは思いました。ですがわたくしはなるべくミンク様と多くの時間を共有しお互いの事を知っていきたいのです。
少し間があった後、ミンク様は肯き提案致しました。


「それだったら今日は一緒に帰りませんか?」


思わぬ誘いに口元が緩みそうになる。ミンク様と一緒に帰れるだなんて。
わたくしが即答で肯定の返事をすればミンク様は微笑みました。ですがその微笑みはルカリオに向ける物とはやはり違い寂寥感に見舞われます。しかしミンク様と外を並んで歩いて帰れるということを思うと少しそれも和らぎました。

それではまた後で、と手を振りルカリオを連れて立ち去ったミンク様の後ろ姿を眺めた。
その際無意識的に短いスカートから伸びる白く綺麗な足を嘗めるように見ていることに気が付き慌てて目を逸らす。
わたくしは足フェチなのでしょうか。よくミンク様の足を見てしまいます。
嗚呼、あの艶めかしい足に蹴られたい。頬擦りしたい。もし許されるなら嘗め上げたい。

尽きぬ欲望に恋い焦がれてしまうわたくしは愚か者でございます。





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