ミンク様は少し驚いたという風に僅かに目を開いてわたくしを見ました。
「条件?」

「そうです」

「言ってみて下さい」

「偽装であったとしても付き合うのでしたら、わたくしを愛して下さいまし」


するとミンク様は大声で笑いました。


「あははは!本気ですかノボリさん」

「勿論でございます」

「私は屈折した歪な愛し方しか知りませんよ?それでもよろしいんですか?」


わたくしが声を出さずに頷くと満足そうに笑いソファーから腰を浮かせました。


「このドM」


耳元で囁くようにしてわたくしを罵った後耳を甘噛み。急な刺激に体を硬直させたわたくしをまた笑い、可愛いと呟く声が鼓膜を揺らす。その時に掛かった吐息が擽ったくて肩を竦めるとわたくしの後頭部を掴んで逃げられないようにすると温かな舌を耳に差し込んできたので直接水音が脳内に流れ込む。くちゅくちゅという音と時折掠める熱い吐息。


「本当に淫乱ですね」


ぼうっとするわたくしを楽しむように見てから目尻に滲んだ涙を唇で拭った。


「交渉成立、ですね。貴男は私と付き合い私は貴男に愛を与える」


ミンク様は腰をもとのソファーへまた落ち着け、リモコンを操作してテレビの電源をつけた。


「一つお聞きしたいことがあるのです」

「なんですか」

「何故あなた様は職場ではあのような態度を?」

「ああ、あれですか」


その時、手元のリモコンを弄っていたミンク様の目が僅かに曇りました。


「社会に適応するにはあちらの方が楽なんですよ」

「と言いますと?」

「こんな性格じゃなかなか就職も難しいんです」


そこでミンク様は立ち上がりこの話は終わりだと言うようにリモコンを置き、わたくしの頭を撫でて部屋を出て行った。





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