学園祭当日。
わたくし達のクラスはあれから話し合い、先生が提案してくださったプラネタリウムに決定致しました。
アララギ先生に頼み機材を借りて、借りた教室の天上に白い布を貼り付け飾りつけた。
生徒会の皆様には咎められてしまいましたが無事にここまで用意できたのですから一安心でございます。
今のところ何のミスも無く通常運営中です。
解説の声は事前に録音しておいたので、ポインターで星を順に追って指し示すだけの業務ですので至極簡単でございます。
出し物をプラネタリウムに選んだのですから仕方ありませんが、カップルがとても多いこと多いこと。薄暗いから気付かれないとでも思っているのでしょうか。迷惑極まりません。
わたくしも本当は先生とプラネタリウムを見たいのです。
まあ腹の立つこともありますが淡々と仕事をこなし、やっとわたくしの休憩時間に入りました。クラスメイトと交代し、部屋を後にしましたが正直行く場所がありません。
どうしたものか。
そうです、クダリの部活は招待試合をすると言っていました。どうせですから行ってみますか。
「あれ、ノボリ君?」
「あっ」
両手に焼きそばやらフランクフルトやらを沢山抱えている先生。
「何かお持ちいたしましょうか」
「じゃあお願いしようかな」
困ったように笑う先生の腕の中から焼きそばとクレープとタピオカジュースを取り上げた。
「ごめんね助かったよ」
「いえ」
先生の隣に並んで歩き出す。
「ノボリ君は一人なの?」
「はい、クラスの当番が終わってしまいまして」
「そうなんだ。なら私に付き合ってくれない?私も一人なの」
朗らかに笑う先生と一緒に学園祭を回らないかと聞かれたらもうわたくしの答えは決まっています。
「勿論でございます」
先生とクダリの試合を観戦した後、色んなクラスの出し物を巡って夢のような時間を過ごしました。
途中生徒に冷やかされたりしましたが、それすらわたくしは嬉しく思いました。ここが学校でなかったらわたくしと先生は恋人同士に見えたのでしょうか。いえ、冷やかされたということは学校でも見えるということなのでしょうか。
「もうすぐ終わっちゃうね」
その一言でもうすぐこの魔法ような時間が終わってしまうことに気付く。
「そう、ですね」
「最後に私行きたいクラスあるんだけど…いいかな?」
わたくしが頷くのを見てポケットからしおりを出しある項目を指差した。
「これは」
「行こっ」
子供のような無邪気な笑顔で駆け出した先生。背中を追いかけてわたくしも駆け出す。
「いらっしゃーい!」
出迎えたのはわたくしとそっくりな顔を持った弟でした。
「クダリ君お疲れ様」
「わあ、モモ先生来てくれた!」
嬉しさあまって先生に抱きつこうとするクダリの首根っこを掴み阻止。
ここでクダリはわたくしの存在に気付いたようで「ノボリいたんだ」と言い、にやりと笑いました。その時の目ははっきりと家に帰ったら色々聞くから覚悟して置けよ、と言っていました。今日はあまり家に帰りたくありません。
「もうすぐ上映でしょう、早く用意なさったらどうですか」
「はーい」
すごすごと部屋の照明を消しに行ったクダリを視界で捉えながらわたくしと先生は座りました。その時にブランケットを渡すのを忘れずに。
パチンと電気が落とされ部屋は黒が支配した。
「じゃあ始めるよ」
投影機のスイッチを入れて起動させる。
「綺麗」
天上を見上げればそこには数多の星。
天の川が流れる夜空を先生の瞳には無数の星が映っていた。
きらきらと反射して輝くそれにわたくしは見惚れてしまい、星座の解説やクダリがへまをしなかったか等一切覚えてはいませんでした。
ぱちんと部屋の電気が点けられて我に返る。
「綺麗だったね、ノボリ君」
目を細めて笑う貴女様の方がお綺麗でした、なんて言える筈も無くて。取り合えず曖昧に頷いておきました。
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