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文字、文字、文字の羅列。アルファベットや仮名、漢字が紙面を彩っている。
此処何日間もこの文字達と私は向き合っている。が、もうゲシュタルトが崩壊寸前のようで知っている文字なのに全く知らない言語の物のように感じられてくる。

 
「あああああ!もう無理!」
 
「どうしたの発狂して」
 
「この方の不審行動はいつものことではないですか」


遂に限界がきた。
勉強嫌いの私にしてはよく頑張ったよね。駅のホームのベンチに座って喚いている私は不審者そのものだろう。


「いつものことではないですから!今日はお二人に構っている時間はないのです」
 
「えっ」
「おや」


そうだ。今日は二人に構っている暇があったらテキストにかじり付いて勉強をしなければいけないんだ。

 
「今日入試なんで、今は一分でも惜しいんです。勉強させて下さい」
 
「それは失礼致しました」
 
「受験かあ、頑張ってね」
 
「はい」


よし、と気合いを入れて再びテキストに視線を落とす。

 
「それは英語のテキストですね」
 
「英語喋れるの?」


私の手元にあるテキストを覗き込んでくる黒と白。

 
「あまり得意ではありません…だからこのテキスト読んでたんですけどね」
 
「そうなんだ。確かノボリ英語得意だったよね」
 
「ええまあ。ですがクダリも話せるではありませんか」
 
「うん」


涼しい顔をして私の前で立ち話を始める二人。
それにしても…


「お二人とも英語話せるんですか!?」
 
「サブウェイマスターですから」
 
「うわぁ…」
 
「何ですかその顔は」
 
「いーえー何でも?」

 
顔もいい。バトルも強い。外国語も話せる。…なんか腹立つな。

 
「あ。ここの答え間違ってる」
 
「えっ」
 
「本当ですね」
 
「ど、どこですか!?」
 
「ここです」

 
白い手袋をした指先がある会話文の穴埋め問題を指し示す。
それから丁寧に解説付き何故こ解答が間違っているのかを教えてくれました。


「ありがとうございます」
 
「いえお気になさらず」
 
「試験頑張ってね」
「はい」


それからライモンシティ行きの電車が滑るようにホームに入ってきました。


「落ち着いて、適当でも良いので空欄は作らないこと」
「わかるのから解いてんだよ」
「わかりました」
「指さし確認準備おっけー!目指すは合格、」
「「出発進行ー!」」