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12/21〜




『クリスマスなんか嫌いだー!』

仕事も一区切りついたので事務所で休憩しようかと思えばわたくし達と同期の職員が嘆いおり、随分と荒れている様子でした。

「どうなさったのですか?」

『聞いて下さいよノボリさん』

そう言って身を乗り出す彼女は相当鬱憤が溜まっている様子。

『さっきバカップルがホームのギリギリのところでふざけてたんです。しかも電車ももうすぐ来るっていう状況ですよ』

「それは大変危険ですね」

『ええ本当に』

「しかしながら、何故それがクリスマスは嫌いだという考えに繋がるのでしょうか」

『問題はこの後なんです。
それを見た私は慌ててこの行為の危険性について説明して、なんとか白線の内側まで下がっていただくことに成功しました』

それは駅員としての正しい対処だと言えるでしょう。はなまるを彼女にあげたいくらいです。

『そうしたら相手の男がですね、
“クリスマスも仕事だなんて寂しいやつだな。一緒に過ごしてくれる相手いないから、僻んでんの?”とのたまってきたうえに彼女と一緒にゲラゲラと指をさして大声で笑ったんです!』

許せないと怒り狂い、拳をかたく握り締めていらっしゃるその姿はオコリザルのようでした。

「理由は理解致しましたが、お客様に対してのそのような暴言はお控え下さいまし」

『わかりました、すみません』

わたくしからの注意にしょぼんとする。
本当に感情の起伏が激しい方です。

『事実を言われてつい頭に血が上ってしまったんです』

力無く笑う彼女はわたくしから見ると、どことなく傷心しているようでした。

「それは違います」

『何がですか?』

「一緒に過ごす相手居ないというのは嘘です」

何を言われているかわからないというようにぎゅっと眉間に皺を寄せた。

「わたくしがいるではありませんか」

『な、なにを…冗談はやめて下さい!』

「冗談などではありません。今夜仕事が終わりましたらライモンシティの観覧車の下で待っていて下さいまし」

おや、もうこんな時間ですか。そろそろ仕事に戻らなければいけません。
唖然としている彼女の返事も聞かずにわたくしは事務所を後にしました。
追ってまた叫び声が聞こえたような気が致しましたが、わたくしは決して振り返りませんでした。