short | ナノ
 


じりじりと太陽が私たちを照りつける。今日は猛暑日になるらしい。今朝ニュースで言っていた。
ルカリオは家で留守番、私と同居人は買出しにマーケットへ。その帰りにあまりの暑さについに音を上げた。


「あっちー」

「ほら、家まで帰ったらアイスを食べよう。それまでの我慢だよ」

「……よくそんな格好でゲンは平気だよな」


暑くないのかと訊ねられたので「暑いけどそんなに暑くないよ」と返せば訝しげにまじまじと見られてしまった。

いつも通りのジャケット姿の私とは対照的に、半袖のTシャツに七分丈のカーゴパンツ姿の彼は夏らしい涼しげな格好であるにもかかわらず、暑い暑いと汗を掻いている。


「ゲンはおかしい」

「そんなことないよ」

「周り見てみろよ。みんな俺みたいになってるから」


そう言われればその通りなんだけど。


「でもホウエン地方に比べれば「あそこは特別だ」


つんとして言うものだから苦笑いが漏れる。ホウエンやジョウトやカントーに比べてシンオウは涼しい気候なので季節になると観光客が多くなる。


「なんだよ」

「なんでもないよ」


笑ったことを咎める様に睨み付けてきたのでまた苦笑いを浮かべてしまった。


「怒らない怒らない。さあ、帰ろう。早くしないと買ったものが悪くなってしまうからね」


未だむすっとしている彼に買い物袋からあるものを取り出し、渡した。


「水?」

「帰るまでに君に倒れられたら困るからね」

「ゲン!!!」


いよいよ怒り出した同居人をおいて早足で歩き出した私はもしかしてサディスティックという人間に属するのかもしれない。

だって今この瞬間をこんなにも楽しいと思っているのだから。