short | ナノ
 

今日も仕事帰りに買い物をと思ってデパートに寄った。
するとデパートの中に入ってすぐのところに人だかりが。

「ん?」

その近くには【11月14日はいい石の日!進化の石セール!】と書かれたポスター。
そういえば今日は11月14日だったなー、なんて考えながらセールをやっている横を通りすぎようとした。

が、人混みの中からにゅっと腕が伸びてきて俺の腕をがっちりホールド。

「君らしい人がいたから、もしかしてと思ってね」

人混みの中から出てきたダイゴはいつもの姿とは打って変わって、スーツもよれ、スカーフも乱れ、髪もぼさぼさという酷い有り様だった。

「すごい格好だな」

呆れたように言ってみせたが、ダイゴは紙袋を抱え直して笑って言った。

「ああ、本当に安くてね。大賑わいだったよ」

本当にこの男は、石のためならなんとやら、だ。
ぼさぼさの髪を手櫛で簡単に直してやると、ダイゴはきょとんとした後みるみるうちに顔を赤くした。












それから他愛もない話をした後、俺は当初の目的だった夕飯の材料調達を思い出した。

「じゃあ俺、もう行くから」
「なんで?」
「なんでってお前な…俺は夕飯の材料買いにきたんだよ」
「ちなみに今日の夕飯のメニューは?」
「秋刀魚焼いたやつとわかめと豆腐の味噌汁とか。和風にしようかな、と」
「じゃあ今夜はお邪魔するね」
「……はあ?!」

なんで俺がダイゴに飯を作ってやらなきゃならんのだ。
しかもその大量の石はどうするんだ、まさかうちまで持ってくる気か。重いだろ。大人しく自分家帰れ。

言いたいことは沢山あったが、ダイゴの方が一枚上手であった。

「材料費なら僕が全部出すよ。君が作った料理は美味しいからね」