天上からぶら下がっているシャンデリアがきらきらと輝いて室内を照らしている。ソファーに優雅に座る男の前に立ちはだかるのはまだ年端も行かない少女だった。 「今日こそあなたを倒します」 「出来るものなら」 少女は意気揚々とボールに構えたが男は思い出したように言葉を続ける。 「そういえば君、何故そんなに俺に勝ちたいんだ?チャンピオンになりたいのかい?」 そう問うと少女は明らかにうろたえ始めた。 目線は宙を泳ぎ、口はコイキングのように開閉を繰り返す。そのうえ徐々に顔は赤く染まっていった。 この男、恋愛経験は豊富である。故に鈍感じゃあない。少女のこんな素直な反応を見ていれば何となく気付く。 ――この子、私のこと…。 そしてにやりと色気をたっぷり含んだ笑みを湛えて、少女の腕を自分の方へ引っ張った。少女はいとも簡単に男の上になだれ込むようにしておおい被さる。 男と少女の顔の距離は一気に近くなり、少女は目を真ん丸く見開き更に顔を紅潮させた。 「ねえ」 少女の耳元に唇を寄せ男は囁く。 「顔、真っ赤」 慌てて体を起こそうとする少女の腰に腕を回して動きを封じ、男は自分の耳元で反論する少女の声を聞きながら笑みを深めた。 ――ああ、そういうことだったのか。私もこの子のことが……。 腕の中で未だに抵抗を見せる少女に愛しさを感じ、抱き締めている腕に力を込めた。 「私が君に負けることは有り得ない」 「……」 「そうしたら私を倒すまでずっとここに来てくれるだろう」 だからこの勝負だけは負けたくないんだ。 ← |