さよならの時間
もう僕が辿り着いたときには全てが収束に向かっていた。
スリザリンの自室から秘密の部屋へ行ってみれば床に寝転んだジニー。リドルの本体である日記にバジリスクの牙を突き立てているハリー。その牙の持ち主であるバジリスクはぐったりと倒れこみもう動いてはいなかった。
そしてリドルは消えかけていた。


「リドル」


からからの喉からは掠れた声しか出なかった。それでもリドルには僕の声が聴こえたらしく、こちらに振り返った。


「ナマエ」


酷く悲しそうなリドルの顔を見た瞬間僕の全身の血が煮えたぎっていくのを感じた。自分の魔力がざわめく。杖を握る手は震え、杖先から火花が飛び散っていく。


「そこを退けポッター!」


ハリーは唖然としたように僕を見たが日記から離れることはせず、事もあろうかバジリスクの牙を更に深く突き立てたので杖を振って吹き飛ばす。
加減はしなかった。
壁に打ち付けられたハリーは意識を失い、ずるずると座り込んだ。何本か骨が折れただろうが関係ない。
殺してやろうと再び杖を振ろうとすればリドルがまた僕の名を呼んだので、はっとリドルの許へ駆け寄る。そうだ、ハリーに構っている場合じゃない。


「リドル、リドル。苦しいよリドル」

「何そんな情けない顔してるのさ。ナマエらしくない」


もう殆ど消えかけてしまっているリドルはそっと僕の頬に手を添えたが、もうその温もりも触れられている感覚も感じられなかった。それがもうリドルと会うことが出来なくなるという現実を突き付けられているようで、悲しくて、辛かった。
ほろりと涙が私の目から零れ、リドルの頬に落ち、流れる。


「君はスリザリンの生まれ変わりだろう?しっかりしなくちゃ」

「でもその前にただのナマエでもあるよ」

「それもそうだね」


少し悲しそうに笑うリドルに胸が引き裂かれそうになった。


「僕、リドルがいなくなったらどうしたいいのかな、ねえ、リドル」

「それはナマエが決めなくちゃ。……ああ、もう時間だ」

「いやだ!いやだよリドル!!」

「愛してるよ、ナマエ」


そう言ってゆっくりと目蓋を閉じるリドルにそっと唇を落とした。



さよならの時間


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