ぼろぼろの店――デビルメイクライの前にスクーターを止めてピザ片手に降り立つ。
「ピザの配達に来ました」
「待ってたぜ」
ドアが物凄い勢いで開かれ店主であるダンテが飛び出して来て、ハグしようと両手を広げたのでそれを華麗にピザ屋のナマエはかわした。
「けっ、つれないな。まあそこがいいんだけど」
「マゾか」
「違ぇ。けどお前相手ならいいかもな」
「スカァム」
汚いものを見るようにダンテを見下し言い放つナマエ。するとダンテは険しい顔に一瞬変わったが、ナマエの手の中にあるピザを掠め取り箱を開けてその場で食べ始めた。
「今日こそは代金払ってもらいますからね」
「んあ?ツケとけ」
「ツケとけって言うけどもう相当な額になってるんです。そろそろ払ってもらわないと」
「いい依頼入ったら払ってやるよ」
「そう言っていつも払わないじゃない」
悪びれる様子もなく2ピース目を食べ始めるダンテを見てナマエは切り出した。
「今日店長が決めたの。今月中に今までのツケを払ってくれないならもううちはピザをダンテの許には配達しないって」
したり顔で話すナマエに驚愕の表情を浮かべるダンテ。
ダンテはこのピザがとても気に入っていたし、なによりナマエに惹かれていたので、ピザを口実に顔を見られなくなるのは痛手であった。しかし本当に金がない。もうこうなっては仕事はあまり選んでいられないと焦りを覚えるダンテはピザを口に運んでいた手を動かすのを忘れていた。
その様子にナマエはほくそ笑んだ。
「さあ、せめて今日の分だけでも払ってちょうだい」
手をダンテにずいっと出し代金を要求する。その手をダンテはピザを持っている手ではない空いているもう片手で絡めとり、自分の方へと引き寄せ素早く口付けをした。呆気に取られているナマエにぱちんとウインクを飛ばし、言う。
「今日の分はこの「キスで済ませられると思ってるの?」
「えっ」
「ん?どうなのかなダンテ君?」
有無を言わさない笑顔を湛えてダンテのコートを鷲掴みにするナマエ。
逃げようにも掴まれて逃げられないダンテ。
この状況を脱したい一心で信じてもいない神に助けてくれと祈った。
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