Codependency
薄暗い空間。日の光など届かない場所に閉じ込められて幾日経過しただろうか。手首には私が逃げることができないように冷たい銀が絡み付いている。身を沈めれば私を包み込んでくれるふかふかの真白なベッドは、この薄暗い部屋には浮いているように見えた。窓というものが丸っきりない閉鎖的空間でベッドだけは私を歓迎しているようだった。
この部屋で生活をすることになってからベッドの上で背を丸めて一日を過ごすことは常になっていた。今日も今日とてそうしていると唯一外と繋がる扉が開かれた。


「おはよう、ナマエ」


痩身の男は木のトレーに水差し、スープ、サラダ、パンを乗せて声をかけた。


「おはよう、クィリナス」


その男はかつて私の同級生だった人物であった。





クィリナスはお互い学生だったときに知り合い、次第に惹かれあうようになるまでそう時間は掛からなかった。――そしてクィリナスの異常性に気がつくのにも時間は掛からなかった。私が自分以外の男と話すと狂ったように責め立てるのだ。それは先輩から後輩、果ては教授までもが対象だった。クィリナスの嫉妬深さは異常だった。時には殴られることさえあった。クィリナスと付き合いだしてから急に頻繁に痣をつくるようになった友人たちはとても心配してくれ、私の身を案じて別れるように言ってくれる子も多くいた。
しかし私とクィリナスは別れることなくホグワーツを卒業し、卒業と同時にこの部屋で生活していくことを余儀なくされた。
何故別れなかったかなんて疑問をぶつけられたら私は胸を張ってこう答えるのだ。


クィリナスを愛しているのだ。


彼を一人になんてできない。私に暴力を振るった後彼は必ず震えた声で謝罪とともにこう言うのだ――「私を見捨てないでくれ」、と。
そんな弱い彼をどうして見捨てることができようか。彼の暴力の理由は私がクィリナスから離れて行ってしまうのではないかという不安からくるものだ。彼を不安にさせてしまう私が悪いのだ。殴られることも、怒鳴られ責められることも仕方がないと思っている。
寧ろこんなにも愛されて私は幸せだ。
皆彼のことを異常だという。確かに世間一般から見れば異質で異常なことなのかもしれない。けれど、それの何が悪いのだ。異常なまでの愛をクィリナスから与えてもらえて私は死んでしまうほど幸せだ。



「気分はどうだ」
「とっても幸せな気分よ。貴方とこうして一緒に過ごせるんですもの」


うっとりとクィリナスの顔を見て答えれば、クィリナスも至極幸せそうに笑い、私の頬に指を滑らせ、キスして言った


「私もだ」




共依存
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