初心少年S
少し長めの黒髪と薄暗い黒色の瞳を持つスリザリン寮の少年。私の最近の興味は専らこの少年に注がれていた。

私はこのホグワーツの図書館のゴーストである。
静かな環境で本を読むことが好きな私は禁書の棚にいることが多かった。禁書のスペースであれば煩い子どもたちは入ってこられないし、誰の声も届かない。時々教授たちが調べ物で訪れるくらいで滅多に子どもの来客はなかった。故に私の存在は教授たちと一部の生徒にしか知られてはいなかった。
ある時私は禁書近くの机で誰かが読書をしていることに気がついた。
――生徒だろうか。しかしこんなところで本を読む生徒は五百年の間にたった数人で物凄くその数は少なかった。一体どんな生徒だろうかと久方ぶりに禁書スペースから顔を覗かせて見てみると、肌は不健康な色をしていて黒髪の少年だった。ネクタイから判断するにスリザリンの寮生のようだ。細い指が頁を捲る様が美しく目に映る。
あれからどれくらい見ていただろうか。少年は本を読み終わったようで、本から顔を上げた。その時ばちりと少年と私の目が合った。少年は黒い瞳を持っているらしい。私は驚きで身を固めている少年に声を掛けてみることにした。自分から他人に声を掛けるだなんて何百年ぶりだろうか。


「ご機嫌如何かな、少年。私はこの図書館のゴースト、ナマエ卿だ」
「…セブルス・スネイプ」


ぼそぼそと名乗ったスネイプ少年はそれからも何度も同じ席に座り続けた。その度私はスネイプ少年にちょっかいを出した。


「スネイプ少年はきれいな指をしているな」
「何を言ってるんだ」


怪訝そうな顔として私を見るスネイプ少年の前に薬草大全集を落としてやる。


「私はスネイプ少年の指が好きだ」
「付き合いきれないな」


ばさりと落とされた分厚い本を捲りレポートを書くのに必要な頁を探し始めたのを浮遊して眺めていると、ふと気がついたことがあった。


「もしかして照れているのか、少年」


青白い頬が赤く色づいていることを指摘してみれば、瞬時に本から私へと視線を移し、「誰が」と否定すると、また視線を本に戻す。その様子が必死に自分の感情を隠そうとしているのが手に取るようにわかり、まだまだ青いなと思った。
初心少年S
この時の私は彼の少年がまさか闇の陣営に入ってしまうとは夢にも思っていなかった。


prev next

bkm
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -