「ナマエ先生、こんにちは」
「おや、リーマス君じゃないか。こんにちは」
夏のホグワーツからは子供たちの賑やかさは消え、静まり返った学舎は燦々と太陽の光を受け、廊下を照らした。
休みに入り、カーテンを閉めきった自邸で過ごしていた俺には夏の日差しは強すぎる刺激でしかなく、態々ホグワーツに呼びつけたアルバスを恨む。
話した内容は俺からしたらどうでもいいこと。リーマス・ルーピンが闇の防衛術の教鞭をとるというものだった。呼びつけなくちゃいけない内容か?俺の邸には俺以外のやつが入れないように結界がはってあるから、出向いてこれないのはわかるが…手紙にしろよ、手紙。
そんなこと思ってたらまさかのリーマス君登場。
「アルバスから聞いたよ。今年はよろしく」
「先生と働けるだなんて夢みたいです。よろしくお願いします」
握手をしようと手を伸ばせば、リーマス君は顔を輝かせて手を重ねてくれた。
あーあ、今の台詞女の子に言ってもらいたかったな。リーマス君が女の子だったらよかったのに。
溜め息を吐きそうになるのを抑え、笑みを作っておいた。
「リーマス君は優秀だから」
「ナマエ先生には到底及びませんが」
そう悪戯っぽく笑うリーマス君を見て、まだまだ子供っぽいところもあるんだなとぼんやり思った。
リーマス君はまだホグワーツに通っている学生だった頃から冷静に物事をみることができる子供だった。まあ周りから一線引いていたからこそ子供ながらにしてそれが出来たのだろう。
そういったところがリーマス君の長所であり短所であると思うが、俺はそこが好きだからリーマス君と仲良くやっていた。だって他の悪戯仕掛人とかさ、落ち着きないんだもん。しかも卒業するまでずっと。卒業した後のことは知らんけど。まあ、当時の俺はいつまで餓鬼やってんだって思ってたわけよ。勿論そんなこと口に出して言わなかったし、態度にも出さなかったけど。ああ、ピーターは別。彼奴はもっと自分の意見を主張しても良かったんじゃないか?そんなんだからリドルに唆されるんだ。
「リーマス君」
「なんですかナマエ先生」
「もうリーマス君も教師として働くんだから、俺に先生呼びはおかしいだろ。呼び捨てでいいよ」
俺からの提案にきょとんとして瞬きを数回繰り返すとくすりと笑った。今日のリーマス君はよく笑うなぁ。
「それを言うなら、ナマエ先生だって君づけじゃないですか。もう僕もこの歳なので君づけはちょっと」
「それもそうか」
俺のなかでリーマス君はリーマス君なのだけれど、リーマス君が嫌と言うなら仕方ないか。それにリーマス君がその所為で生徒からなめられたら、俺も居たたまれないし。
「じゃあ改めてこれからまた宜しくな、リーマス」
「宜しく、ナマエ」
I meet you again at the place which became acquainted with you.
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いつもみんなに甘えさせてあげるリーマス君に心の拠り所を作ってあげたかった。