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僕には気にくわないやつがいる。
気にくわないやつなんて狸爺含めて沢山いる。
でもそいつはどうしても関わりをもって手込めにしたい相手なのだ。というのもそいつ──ナマエはスリザリンの直系子孫だというのだ。僕よりもスリザリンから受け継いでいる血が濃い。つまり魔力も高ければその知識も高い。どうにかしてその技術を手に入れ将来の活動に役立てたい。
その為にはナマエに近付かなければならないのだが……。


「ナマエくーん!」

「おはようサリア、今日も可愛いね」


パチンとウインクを飛ばす銀髪赤目キザ野郎。
僕はこの性格が嫌なのだ。自分と同じ崇高なスリザリンの血が流れているとは思えないチャラさで、女関係にもだらしない。


「おはようございますナマエ先輩」

「ああ、リドルおはよう」


腹が立つのを表には出さないよう細心の注意を払いながら挨拶すれば、さっきの女生徒に見せた笑顔と同じ顔で挨拶を返される。

顔をあわせる度に何故こんなやつがスリザリンなんだと苛つくが、今日はいつに増して沸々と憎しみの感情がわき上がり始める。


「ねえリドル」


衝動が奥歯を噛み締めそうになればナマエが声をかけてきた。今日こそこの苛立ちを抑え込んで、こちら側に引きずり込んでやろうと思っていたが、どうやら我慢できそうにない。そう思い早々に立ち去ろうとしていたのに。
感情を隠す笑顔を仮面を張り付けてナマエに顔を向けてやる。


「だめだよ」


ぽん、と僕の肩に手をおき事も無げに笑い言うナマエ。一体やつが何を言いたいのか解らず、また苛つきが増した。そしてナマエは僕に聞こえるくらいの小さな声でパーセルタングを紡いだ。


『もっと上手く隠さなくちゃ』

『何をですか』

『聡明な君ならわかるだろう?』


ぺろりと蛇のように唇を舐めた後、赤く光る目を細め、「それじゃあまたね」と告げて何処かに去っていくナマエの後ろ姿を、僕は見送るしなかった。


「何なんだ」


僕の中にあった先程までの煮えたぎるような憎しみの炎はすっかり成りを潜め、今では歓喜で気分は高揚していた。

──やっぱり彼はスリザリンの子孫だ。

僕の仮面を見破った。それに去り際に見た彼の闇の部分。それは濃く、とても魅力的だった。




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