げきりん | ナノ



漸くローテーショントレインの人気が落ち着いてきた今日この頃。私としてはやっと余裕が出てきて有り難い限りだが、サブウェイとしてはお客様が減少傾向にあるのが悔しいらしい。それでもローテーショントレインを導入する以前よりは増えているらしいが。
人は真新しいものが好きであるからして、客足が増えるのは当然といえる。そしてそれは逆もいえるのである。まあ仕方ないのだ。けれどその中で如何に固定客を得るか、その為にどうバトルで魅せるかというのが問題なのだ。

「ナマエさん!」

「トウヤ君こんにちわ」

「こんにちわ」

ギアステーションの中をうだうだと考えながら歩いていると、後ろから声を掛けられたので振り返ればトウヤ君がこっちに走ってくるのが見えた。
今日も笑顔が眩しいね。


「今日はどのトレインに挑戦ですか?」

「スーパーシングルトレインに乗ろうかと思ってます」

「そっか、ノボリのところかー」

今日ノボリ絶好調みたいだからトウヤ君には悪いけどきっと負けてしまうだろうな。

「あの」

「ん?」

「ノボリさんとクダリさんと仲良いですよね」

「なんだ、トウヤ君嫉妬してるの?」

「へ?!そそそそんな「安心して、ノボリとクダリとは幼なじみなだけだからさ」

あからさまにほっとしちゃってトウヤ君可愛いなあ。

「そんなに慌てなくても二人をトウヤ君達トレーナーから奪ったりしません」

今度はぴたっと動きを止めて固まったトウヤ君。
なんだか忙しい子だ。

「どうかした?」

「い、いやいいんです…」

暗い顔をして負のオーラを背負って「失礼します」と去っていく。

「あ、トウヤ君!」

その遠ざかる背中に慌てて呼び掛ける。
こちらに振り返ったのを見て、「頑張ってね!」と声援を送るとトウヤ君は大きく頷き先程より少し軽い足取りで奥へと消えて行った。


両手を組んで上へ大きく伸びをすれば凝り固まった筋肉やらなにやらが伸びた気がし、だらんとまた両手を下に落とした。
よし、まだ当分挑戦者は来ないようで呼び出しはないし給湯室でお茶でも一杯飲むか。

そうと決まればと早速給湯室へ直行。
茶葉の入った缶を棚から取り出し茶漉しとポットを使ってお茶を注いだ。
給湯室には誰も居らずなんだか物悲しかったので歌を口ずさんでみる。


「あれ、ナマエ休憩中?」

「ああクダリか。休憩中というか待機中だよ」

ふーんと言ってクダリは私の肩越しに手元を覗き込んできた。


「何作ってるの?」

「ミルクティーだよ」


暖めておいた牛乳を紅茶が入ったカップの中に注ぐ。


「クダリも飲む?」

「飲む飲む!」

「じゃあ自分のカップ持ってきて」

「はーいっ」


職員の各自のカップが入った棚に駆けて行く後ろ姿を見てぼんやり思った。
クダリ…ヨーテリーっぽいな。