げきりん | ナノ

 
 
「ジヘッド、とどめの竜の波動」


ばたりと倒れて伏せるムーランド。
ただいま絶賛お仕事中です。

最後の一体だったムーランドを抱えて悔しそうにしている挑戦者に向かって笑顔を添えて一言。


「ローテーショントレイン、またのご乗車をお待ちしています」


幼なじみとの再会を果たした日の次の日の朝から私は早速の出勤だった。
今までいい年して実質上無職だった私は初出勤の時緊張のあまり、行きたくないと間際になって駄々を捏ねたがあの真面目なノボリがそんなこと許すはずもない。天地がひっくり返ったとしてもあり得ないだろう。
私はノボリに引きずられながら初出勤を遂げるという快挙を成し遂げたのだ。
皆さん吃驚した顔でこちらを見ていましたよ、ええ。
そんな気まずい空気のなか自己紹介も済ませ、ノボリからバトルサブウェイについての説明を受けて私の担当のローテーショントレインに乗り込んだ。

まあ今までに無かったトレインが導入されれば一度は行ってみたいと思うのが人の心理。
それになかなかローテーションバトルをやる機会は少ないということもあってか、初日はとても混んだ。
乗車率を算出すれば素晴らしい数字を叩き出してくれるだろう。そのくらい凄かった。

くたくたの私に職員のみんなはよくしてくれました。本当にいい人達です。
そんな職員の優しさに触れれいると負けていられない、みんなも頑張ってくれているんだから私も頑張らなくてはと思う。


「ただいま挑戦者18連勝中ですのでそのまま待機。次のバトルの準備をお願いします」

「了解」


無線に連絡が入りパートナー達をすぐさま回復。

暫くしてやって来たのはチョコレート色の髪に帽子を被った男の子だった。


「貴女が新しいサブウェイマスターの人?」

「そうです」


男の子は少し吃驚した顔をしてたけど、ポケモンバトルに男も女もない。強いか弱いか、ただそれだけだ。


「それでは改めてまして、ローテーショントレイン、サブウェイマスターのナマエです。以後お見知りおきを」


帽子が頭から落ちないように押さえて一礼する。


「カノコタウンのトウヤです、お願いします」


トウヤと名乗った男の子はボールを手に取ったのを見て、私もボールを手にして宙に投げた。








「またのご乗車をお待ちしていますね」

「はい、また挑戦しに来ます」


次こそは勝ちますからと手を振って降りて行ったトウヤ君。
閉まるドア越しに笑って手を振り返せば、トウヤ君が何故か顔の前にランクルスを持って隠れた。

何がしたいんだ?

ランクルスもいきなりのことに驚いたのか目をパチクリさせていて可愛い。
にやけてしまいそうになる顔をどうしようかと試行錯誤しているとトレインはまた出発した。

……何だったんだろう。

でもまたトウヤ君と戦いたいな。