「ナマエ…」 「ノボリ久しぶりー」 平然とわたくしの前に現れた幼なじみはクダリに抱き付かれながら、マイペースな彼女は久方ぶりの挨拶を致しました。 相変わらず元気そうな姿を見ることができ、安心している気持ちと同時にふつふつと怒りも込み上げてくるのが手に取るようにわかるのです。 「な に が、“久しぶりー”ですか!帰ってくるなら連絡くらいほしいものです。大体あの日旅に出ると唐突に言い出したかと思えば次の日から行方を眩まして…」 どれほどわたくし達が心配したことか、と言えばナマエは困った風に笑ってごめんねと言いました。 「久しぶりに会えたのにあんまり怒っちゃダメ」 クダリがわたくしとナマエの間に割り入って口を尖らせます。 あなたも散々心配していたではありませんか。クダリが言うことも一理ありますので引き下がるしかありません。はあ、と思わず溜め息が漏らす。クダリはナマエに甘いのです。 「ありがとうノボリ、心配かけてごめん」 ナマエは諦めたのを察したのかわたくしに抱き付きながらそう言いました。 もう一度溜め息を吐き、そっとナマエの頭を撫でてやる。こうして許してしまうわたくしも何だかんだ言ってもナマエに甘いのです。 「二人に話しがあるの」 わたくしから体を離してなにやら深長な面持ちで話し始める。 「私がホウエン、シンオウ、カントー、ジョウトを旅してきたのは知ってるでしょ?」 「うん」 「ええ、各地の名産物を送ってくれましたからね」 ナマエは小さい頃から旅が好きで、旅路のついでだと言ってジム巡りもしていました。そんな彼女はあっという間にジム制覇を果たし、若くしてイッシュのチャンピオンをも倒しました。 それ以来ふらっと旅に出るようになったのです。 「実はまだ旅の途中だったんだけどリーグから連絡があって戻ってきたんだよ」 彼女が旅を投げ出してまでこちらに戻ってくる程の理由とは一体何なのでしょう? 「リーグの人は何て言ってたの?」 「なんでも私に就いてほしい職業があるんだってさ」 不敵に笑みを浮かべるナマエ。 「なんだと思う?」 「イッシュのリーグチャンピオン」 クダリが元気に片手を挙げながら答える。 「ノボリは?」と尋ねるナマエに対して「さあ?見当もつきません」と返せば一層笑みを深くする。 「正解はサブウェイマスター」 「は?」 「え?」 わたくしとクダリはお払い箱になるのでしょうか。 「3人目のサブウェイマスターになってくれってさ」 嬉しそうに答えるナマエに内心ほっとする。 よかった職を失わずにすみます。わたくし、今の職場を大変気に入っておりますし誇りも持っていますので。これはクダリも同意見でしょう。バトル狂のわたくし達にとってこんなに適した職はないです。 「ナマエと一緒に働けるの嬉しい」 「私も」 「もうどこにも行かない?」 「うん」 それを聞き母親を待ちわびていた子供のように、全身で喜びを表現するかのようにナマエにタックルするクダリ。 「私も嬉しいよ」 すり寄るクダリの背中を撫でるナマエと再び一緒にいられることにわたくしも喜びを感じておりました。 ← |