ある日の昼下がり。懐かしい顔がシッポウジムに現れた。 「世間はゴールデンウイークだっていうのに仕事、仕事、仕事!私もたまには休みがほしいんですよ……アロエさん聞いてます?」 「ああ、聞いてるよ」 久しぶりにナマエがジムに遊びにきたと思ったらこれさ。まったく世話の焼ける子だね。 決まって私のところに来ると愚痴と不安事を話しては帰っていく。これは私とナマエの習慣になりつつあることだ。旅に出る時も、迷っていたらしく私に相談しに来たもんさ。 「この間も旅行に出掛けたいって言ったら即却下!…確かにサブウェイを運休したら困る人が沢山出るのはわかってるんです。でも他の職員は定期的に休みが貰えるのに私達だけ休みが貰えないっていうのはどうかと思いませんか」 つらつらとナマエから紡がれる不満の嵐。 私も旅から帰ってきたナマエからサブウェイマスターになるだなんて聞いた時は吃驚したよ。私はてっきりファイトマネーで生計を立てていくもんだとばっかり思ってたからさ。 でも確かにナマエに向いている職だと思う。 ナマエのバトルセンスには目を見張るものがある。これは昔から。 流石、幼馴染がサブウェイマスターなだけあるよ。 とは言っても実際は白黒の彼奴等よりもナマエの方が強いんだろう。私の贔屓目かも知れないけどね。 「それならサブウェイマスターなんて辞めちまってまた旅に出ればいいじゃないか。まだ旅の途中だったんだろう?」 私が諭すようにナマエに言えば、さっきは止まることの知らないような勢いで連ねていた不満はぴたりと止んだ。 「あんたなら本当に嫌だったらそうしてると私は思うよ。でもそうしないのは、」 ナマエの下を向き始めた視線を戻すように両頬に手を添える。 「この仕事にやりがいを感じているんだろう?」 澄んだ瞳に私の姿が映る。 そしてナマエは数秒してからゆっくりと肯いてから、私の胸に飛び込んだ。 細っこい体を包むようにして抱き締めてやると、私の背中に回した腕にぎゅっと力が込められる。 私にとってナマエは娘だ。 我が子同然。 こんな可愛い娘をそこらの男に易々と渡すわけないはいかないな。 頭を撫でてながら私はナマエに依存していることを再認識した。 母親が娘を守るのは当然だろう? ← |