あの醤油忘れ事件から何日か経った日のこと。 ナマエがぼく達のジャージを買ってきたから取りに来いって言ってたから、仕事帰りにそのままナマエの家に取りに行った。 「これがクダリので、これがノボリの」 「ありがと」 「ありがとうございます」 袋を開けて透明なビニールに包まれているジャージを受け取る。 ぼくのは深い緑色でノボリのは深い青色。でも青というよりは紺色っぽいかな。 「ねえノボリ」 「何ですかクダリ」 「着てみようよ」 「今、ですか」 「うん!ナマエも着替えてきてね」 「わかったー」 自分の部屋へ引っ込んだナマエを見てぼくもさっさと着替えようとズボンに手をかける。 ノボリはまだ渋ってるみたいだったけど仕方ないという様子で服を脱いでた。 「じゃーん!」 「……」 「どうどう?似合う?」 「うん、似合ってるよ」 やった!ナマエに頭を撫でるようにせがんで撫でてもらう。 実はぼく、人に触られるのはあまり好きじゃない。自分から触るのはいいんだけどね。 でもナマエは別。触られても嫌じゃない。寧ろ落ち着くから好きなんだよね。 嬉しい気持ちを表そうとぎゅってしようとしたら叩かれた。スリーサイズのことまだ気にしてるのかな?もうバレてるんだから仕方ないのに。…あーあ、こんなことになるなら言わなきゃよかった。 「さっきからノボリはどうしたの?何も喋らないけど」 「え、いや、そ、そんなことはございません」 「……そんなに嫌だったんならはっきり言ってくれれば良かったのに」 「何がです?」 「ジャージのこと。ノボリ最初から乗り気じゃなかったし…無理強いさせてごめん」 「別に嫌ではありません。確かに始めは抵抗がありましたが」 「ならなんで」 「いや、それは、その…」 ナマエも鈍いなー。 きっとノボリも似合うって褒めてほしいんだよ。でもぼく言わない。もう少しだけナマエを独り占めしてたいから。 「ナマエ、ナマエ!」 「なに?」 ぼくが呼べばノボリじゃなくてぼくを見てくれる。嬉しい。 「折角着たんだし、写真撮ろう!」 「ナイスアイディアだねクダリ」 「ぼくデジカメ持ってきた」 「随分と用意周到だね」 「まあね」 デジカメを取り出せばまたナマエがぼくの頭を撫でてくれる。やっぱりぼくナマエが大好き! 「じゃあ撮ろっか」 「セルフタイマーにしますか?」 「うーん、一回自撮りしてみてダメだったらセルフタイマーにしよう」 「わかりました」 ノボリがぼくの手の中からデジカメから取り上げて起動させて、カメラをこっちに向けた。そしてぼくとノボリでナマエを挟むようにして中央に寄る。 「それでは撮りますよ」 「はーい」 ぱしゃっ。 シャッターが落ちるような電子音がして、液晶画面を此方に向けて再生ボタンを押して確認。 「うまく撮れてる!」 「さっすがノボリー」 「それほどでも」 ちょっと照れたようにぼそぼそと言うノボリの背中をばしんと叩くナマエ。 「じゃあ家帰ったらさっきの印刷しとくね」 「うん、クダリお願い」 「まかせて!」 次の日の朝、ぼくは約束通り昨日の夜の写真をナマエに渡した。因みにもうノボリには渡したよ! 「わあ、ありがとう!」 ナマエの手に握られてる写真には、いつもの表情のノボリと満面の笑みのぼくに挟まれてピースサインをしている笑顔のナマエが写ってた。 ← |