「お前は何をやってるんだ」 「あっ、宮田」 神代の遣いを終え帰路を急いでいると、前方に怪しい人影。 しかもこんな夜更けに。 咄嗟に身構えたがよく見てみれば旧知の友が座り込んでいるではないか。 「いいところに来てくれて俺は嬉しいよ!」 困っていたんだと手招きする彼に素直に従い傍に寄ってやると、ぎゅっと腕を掴まれた。 「足挫いてさ、動けないんだよね」 「馬鹿か」 「だから家まで送って」 名前を背負って山道を黙々と進む俺。 名前じゃない誰かだったら見なかった振りをしてやり過ごしたんだが。 我ながら名前に対して甘いなと思いながら背負い直す。 「宮田ぁー」 「何だ」 「ありがとな」 名前は俺の首に回した腕で器用に頭を撫でた。 それを特に何と言わずに甘受しつつ歩みは止めることなく進め続ける。 「どのくらいあそこで座り込んでたんだ」 「うーん、正確な時間は覚えてないけど1時間くらいはいたと思うよ」 「……もし誰も通らなかったらどうするつもりだったんだお前は」 「そしたら今日はあそこで野宿かな」 なんという楽観視。 今に始まったことではないが、本当にどうしようもない馬鹿だと頭が痛くなる。 だが俺がこんな時間にこんなところで何をしてたのかを聞かないこいつを気に入ってるのは確かだ。 自分が踏み込んでも許されるボーダーラインをわかっている。 「馬鹿か」 「あははっ!」 もしかして名前は馬鹿の振りをしているだけの道化なんじゃないかという考えは、たまに俺の思考回路を鈍らせる。 それでも俺が名前に好意を持っていることは変わらないが。 「それに俺さ」 「何だ」 「宮田が来てくれる気がしてたから、別に野宿とか考えてなかったし」 嬉しそうな声色が俺の耳を擽り、じんわりと体に染み込んだ。 楽観視 この程度で赤くなる俺も、自分の気持ちを楽観視していたのかもしれない。 |