暖かい陽光が射し込む此所は可愛い猫達が日向ぼっこにたくさん集まるという猫好きの俺の楽園である。心と身体の疲れを癒すのによく来るんだが、今日は可愛い猫とは天地の差があるような、招かれざる者が現れた。 「……淳さま、何でこんなところに?」 俺の天敵、淳さまである。 「お前が見えたからな。たまには遊んでやろうと思って」 「はぁ」 俺はお前と遊びたくなんてない、そんな言葉を飲み込む。ただ猫達に癒されたかっただけなのに。これでは疲れてしまうばかりではないか。 そんなことを考えているとは知らずに、喜べとばかりに腰に手を当ててふんぞり返る淳さま。勘弁してくれよ。 「なんだ、浮かない顔だな」 そりゃあお前のお陰だよ!!! 下唇をぐっと噛み我慢。この村において神代は絶対、だ。 「そうですか?」と惚けてみせる俺が気に食わなかったのか眉を寄せる。 「名前は俺の勘違いだと言いたいのか」 はい、偉そうですね、いつもの淳さまですね、これがデフォですもんねわかってますよ、ええ。……でも!腹立つ!婿養子のくせに!もし俺が亜矢子様の許嫁だったらこの立場も逆だったに違いないのに、この餓鬼調子に乗りやがって!! 心の中で大人気なく盛大に地団駄を踏むが、この現状は変わりない。いくら俺が年上であろうと神代に迎えられた婿は婿。この村にいる限り淳には勝てないのだ。あの宮田ですら逆らえないんだから仕方がないと言えばそうなのだが。 「いえ、滅相もない。ただ無意識だったもので、気付かなかったのですよ」 ふーん、と今度は興味無さげな淳さま。 な ん だ こ い つ は !!! 自分で言っておいてこれか! いやこれが淳さまだ。淳さまクオリティだ。だからこそ俺は淳さまが苦手なんだろう? 「おい名前」 今度はなんだ、俺は色々と考えてるんだよ!お前とは話してる場合じゃないんだよ!第一俺は疲れを癒すために此所にきたのであって……ってああああ!!俺の子猫ちゃん達があああ!か、神代淳…!貴様、俺の心のオアシスを、マイスイートエンジェルたちを、 「お前暇だろう?」 「暇、じゃ、ない!!!」 「明日からうちの使用人になれ」 「なりません!というか俺の話を聞け!」 そして俺の心の声を遮るな阿呆! 「給料も今の倍やろう」 「そんなことで俺が靡くわけ」 「猫も好きなだけ飼ってもいい、許可する」 「っ……、でも、」 「何なら毎月1日に亜矢子に猫耳を着けさせてやる」 ひ、卑怯だぞ、神代淳……!俺が猫好き且つ亜矢子さまを秘かに慕っていること知っていて、こんな交渉を持ち掛けるなんて。 だが、 「喜んで働かせていただきます」 神代と教会は、絶対だから、な。 言い訳 ───── 補足。 名前くんは宮田と同い年でずっと亜矢子さまのことが好きだったのですが、淳さまが現れてからというもの亜矢子さまが名前に構ってくれなくなります。恋する乙女は猪突猛進です。加えて淳さまが神代の権力を振りかざし偉そうにしているのが気に食いません。なので名前くんは淳さまが嫌いです、天敵です。しかし淳さまは名前くんのことが気になるご様子。何かとちょっかいを出してきます。それがますます気に入らない名前くん。それでも仲良くなりたい(あわよくば自分のもとに置いておきたい)淳さまは名前くんを観察するようになります。それで名前くんがよく猫と戯れにこの場所へ訪れること、亜矢子さまを慕っていること知ります。それをダシに交渉する淳さま。悪どいですね。 |