Fact | ナノ




教会の正面が見える道まで来たところであることに気が付いた。

「牧野、さん…?」

扉の前で行ったり来たりを繰り返している牧野さんが木々の邪魔されながらも確認できたので、その姿を見た俺は足早に教会へ向かった。













教会の中で待っていればいいものの何だか落ち着かなくて、胸の前で両手を握りながら行ったり来たりを繰り返しながら織人さんを待っていると途中で八尾さんに笑われてしまった。
うう、恥ずかしい。



「牧野さーんっ」

「織人さん!」


織人さんの声が聞こえて忙しなく動かしていた足がぴたりと止まって自然に傍に駆け寄って行ってしまう。


「こんなところにいたら誰かも見られてしまうかもしれませんよ」


もう、と頬を膨らましながらも私の肩を引き寄せて教会の中へ入ろうと促す織人さんにときめいてしまう。


神を信仰している私が、神ではなく織人さんに縋ることは本来あまり良しとはされない。
なので私が織人さんにカウンセリングを受けていることは私と織人さんの他に八尾さんと双子の弟である宮田さんしか知らない事。
神代や村人に知られでもしたら私は吊るし上げられるだろう。そう思うと震えが止まらない。けれど、それでも織人さんに会って二人でゆっくりとお話がしたいという想いは抑えられないんです。



「この間お会いした以来ですね」


教会内の奥の一室に織人さんを案内して着席。
にっこりと笑って鞄からカルテのような紙を取り出してクリップボードに挿んだ。


「え、ええそうですね」

「大分こうして牧野さんとはお話し出来ていなかったので、不謹慎なのはわかっているんですがこうしてゆっくりとお話し出来る機会が設けられたのは嬉しいんですよ。俺から牧野さんに会いに行くなんて事なかなかできませんから」


そう言う織人さんに思わず身を乗り出して抗議してしまった。


「お仕事がお休みのときには是非きてください!」


私のあまりの必死さにきょとんとしていた織人さんでしたが、すぐに嬉しそうに「では今度の休みにでもお邪魔しますね」と頷いてくれたので胸が温かくなった。


「いつでもお待ちしています」

「ありがとうございます」


そして紙面にペンをさらさらと走らせ何かを記入した。

ペンを握る姿もさまになる織人さん。
織人さんは村人からの人望も厚く、容姿も容姿なのですが人柄も素晴らしいので多くの人から好意を抱かれている。私もその大多数の中の一人というわけですが、この私の性格のお陰で織人さんとたくさんお話しすることできたり気にかけてもらえたりするので、たまにはいいかもしれない。