「おかえりなさい宮田さん」 「なぜ貴方がうちにいるんですか」 はぁ、と溜息が零れる俺をうきうきとした顔で眺めてくるこいつは度々うちに転がり込んでくる。 一度大雨のときに我が家の前に座り込んでいたときがあった。そのとき以来風邪をひかれては困ると鍵を渡したのが間違えだった。それからというもの、俺が帰ってくるよりも早く家に平気で居座るようになった。 「ダメですか?」 「ええ。ダメです」 鞄を机に放って脱いだ白衣を椅子の背に引っ掛ける。 「でも宮田さんは優しいから帰れとは言わないんですよね」 にこっと笑って言う奴の頭を軽く叩く。 俺が優しいだなんてこいつはどうかしてる。どこが優しいんだ。 ――が、こいつに帰れとは言わない。それは事実だ。 始めのほうは言っていたが今更口煩く言っても仕方ないのは自覚済みだから。 「言ってほしいのか?」 「いいえ」 そして馬鹿みたいに嬉しそうな顔を見るのが嫌いじゃないのも ――事実である。 |