俺は宮田さんに懐いている。 これは事実。 でも村の一部の人々は俺のことを薄気味悪そうにしていたり、怯えた様子で見ていることを俺は知っている。 俺は羽生蛇でも旧家にあたるものである。 故にこの村の暗い部分も知っている。 けれど、俺達一族は常に傍観に徹していた。 所詮俺達は臆病者なんだ。 「なあ、」 墓標の前に立ちつくし、誰に聞いてもらうでもなく呟く。 「俺は変わりたいんだ」 長く続くこの村の歴史を変えたいんだ。 でもどうやって変えれば良いのかわからない。 俺ごときが何かやっても仕方ない。結局はこの運命に甘んじて、縋って、生きている。 それはきっとみんな同じだろう。 牧野さんも……美耶子ちゃんも……、宮田さんも……。 「父さん、母さん。俺間違ってるかな」 こんな問いをしたところで仕様がない。 「また来るね」 わかっているけど臆病者の俺は誰かに縋っていないとどうもやっていけないようで。 ――ああ、宮田さんに会いたい。 そして俺は今日も宮田さんの家に足を伸ばすのだ。 |