がらりとスライド式の扉が開いたと思ったら小学生らしい可愛い声が聞こえてきた。 「織人先生」 「どうしたの春海ちゃん?」 キャスターつきの椅子に座っていた俺は、そのまま椅子を回転させて春海ちゃんに向かい合う。 「あのね、ちょっとお話聞いてほしいの」 「いいよ」 どこか緊張した様子の春海ちゃんを和ませようと自分に出来得る優しい笑顔を作ると春海ちゃんは肩の力を抜き、部屋に置いてあるソファーに身を沈めた。それに倣い俺愛用のキャスター椅子から腰を上げて春海ちゃんの向かい側に座る。 「織人先生は好きな女の人とかいないの?」 いきなりの春海ちゃんからの爆弾発言に噴出しそうになる。 「ど、どうして?」 「教えてよ先生」 一瞬宮田さんに頼まれたんじゃないかと思ったが、流石にそんなことしないだろうという考えに落ち着く。 少し冷静さを取り戻した頭できっと春海ちゃんの相談は恋についての悩みなんだろうと推測を立てた。 それに今俺の好きな人は生憎女性ではない。 「いないよ。どうして?」 「あのね、春海知ってるの」 そしてこちらに体を寄せるように身を乗り出して小さい声で話し始める春海ちゃんに、俺も自然と上体を倒して春海ちゃんに近づいてしっかりと聞く体勢を整えた。 「求道師様はね、織人先生のことが好きなんだよ」 「えー、そんなことないと思うよ。何でそう思ったの?」 真剣な顔で言う春海ちゃんに思わず笑ってしまった。そんなわけないだろ。 「だってこの間教会に遊びに行ったら八尾さんと求道師様が話してたもん」 「どんな風だった?」 「織人先生は宮田先生と仲がいいからって求道師様が悲しんでて求道女様が慰めてたの。そのとき言ってたよ、――好きなのに、って」 ここまで聞いたらもう俺は笑えなかった。 確かに今までのことを考えたら全く有り得ない話、というわけでもないかも。 態々外に出て俺のことをずっと待っていたり、変にむきになったり、顔を赤くしたり。 記憶を探れば探るほどそれらしいことばかりが思い浮かんでくる。 ……、俺はどうしたらいいんだ。 |