――俺の上司は卑猥だ。まあ上司が卑猥ってどういうことなのかと説明すれば、 「…何です、人のことをジロジロと見てきたりして…」 「いや、今日もエロい尻してるなあと思いまして」 「…そうですか」 せっせと書類を整理する上司のランス様の、それはそれは綺麗で揉み甲斐のありそうな尻を眺めていれば俺の視線に気がついたらしい彼は酷く不機嫌そうな表情でこちらを見やった。ロケット団一冷酷であると謳われる彼のそんなキツい視線にとりあえずおちゃらけた態度をとってみるものの、俺のそんな言葉も態度も今のランス様にはあっさりと流されてしまって、俺は正直つらまらないなあなんて思いながら歩く度に綺麗な動きを見せるランス様を眺めていた。…ちぇっ、昔は俺の言葉に逐一反応を返してくれてたってのになあ…。 「そんなことよりナマエ、あなたはとっとと手を動かしなさい。何故私があなたをここに連れてきたのかよく理由を考えることですね」 「俺と愉しいことするため?」 「あなたの頭をかち割るという愉しいことならしてあげますよ」 「ランス様こっわーい」 俺が再びちゃらけてそう言ってみればついに本気でランス様に睨まれてしまったので、仕方なく俺は先程持ってきた書類を棚にしまう行動に移ることにした。逆らったら後が本当に怖いしな。…でもょっとくらい遊んでくれたっていいのに。 「ランス様、この書類は?」 「それはこちらに」 「こっちのは?」 「あちらに」 そんなことを考えつつも言葉にする勇気はないかないから俺は大人しくランス様の指示し従う。まあ、俺は自分で言っちゃうのも何だけどやる気になればそこそこどんなことだってオールマイティーにこなせちゃうタイプの人間だ。所謂出来る男ってやつね。だからこういう仕事は嫌いじゃないし、こう してランス様直々にご指名を受けることも出来る訳だ。 「…にしてもすごい量っすねー。これ全部必要なんですか?」 「必要なもの以外は残しませんし、何より恐ろしいのはこの量の情報が全てあのアポロさんの頭の中に入っているということです」 「はあ!?あの人ここの情報全部把握してるんですか!?」 驚きから思わずランス様を見やれば、彼は俺とは真逆に、特に驚いた様子もなく平然と頷いた。…隣で仕事をする上司の、更に上に立つ我らが総統アポロ様にそんな人間離れした能力が備わっていたなんて…。前々から出来る方だとは思っていたが…。 「アポロ様ってすげー方なんですね」 「ええ。だから私たちもあの人に続く気になれるのです」 「…ま、そうっすね…」 ボス無き今、こうしてロケット団が活動出来ているのは全てあの人の指揮あってのこと。今更そのことに気づくなんて、俺はあの人に比べればやっぱりまだまだで、それに引 き換えその事実をきちんと把握していたランス様の考えときたら。…幹部クラスの実力の持ち主なのだから当たり前と言ったら当たり前なのかもしれないが、それでもやっぱりこの上司は、ランス様は、すごい人だ。 「…ランス様って、」 やっぱすごい人なんですね。書類をしまう手を一旦止めてそう告げようと隣のランス様を見やれば、けれどそれよりも先に飛び込んでくるのは落下する無数のファイルの影。なんて不運な出来事なんだと思いつつも、なんてナイスなタイミング、と思わなくもない。 「!!」 「っ、」 そこから先はほぼ本能的なものだった。アポロ様人間離れしすぎとか、ランス様エロいけどすごい人とか、今まで考えてたそういうことは一気に全部吹っ飛んで、気づけば俺は、ランス様に覆い被さる様な体勢をとっていた。 「…だいじょーぶですか」 「………ナマエ…あな、た…」 ズキズキと背中は 痛むけど、ランス様が無事なら文句はない。そんなことを考えながら見やったランス様は驚きからかぽかんとした表情で俺を見上げていて、その姿はいつも仕事中に見る冷酷な姿というよりプライベートな時に見せてくれる可愛いらしい姿に近く、俺は不覚にもちょっとムラっとしてしまった。…まあ贔屓目バリバリなのは分かってるけど、これでも俺はランス様の一応恋人なんだからそれは仕方のないことだと思う。 「…っ、背中…!」 「んあー…あー…まあ、大丈夫っすよ」 「大丈夫な訳…!」 「…それよりランス様、」 俺は慌てて身体を起こそうとしたランス様の手をとってそのままそっと口元に引き寄せる。びくりとランス様の身体が強張るのがわかったがこの際気にしてはいられない。…今更全てを暴露するのもあれなんだけどさ、 「…抱かせてください」 仕事中だけど、恋人をこんな人気のないところに呼びつけて、しかも2人っきりってシチュエーシ ョンを作ってくれて、更に散々エロい姿見せつけて、そして終いにはそんな顔するなんてさ…それって相手に誘ってるって解釈されてもおかしくないよな?わざと唾液をのせた舌先で引き寄せたランス様の手首を舐めあげれば、彼の身体がぴくりと震える。 「ナマエ、やめっ、」 「…やめませんよ、」 じたばたと暴れる身体を抑えつけて耳元でそう囁けば、ランス様の身体はわかりやすい程に反応を返してきて。…これはあと一押しだなあなんて感じた俺はキッとランス様の視線を絡めとって囁く。 「…ねえ…ご褒美くれよ、ランス」 そして唇にキスを落とせば、ランス様の抵抗はなくなっていた。 狼へのご褒美はアナタで十分です (ごちそーさまでした!) (…もう二度とあなたは ここには連れてきません!) (思い出しちゃうから?) (っ!) back |