こんにちは、バトルサブウェイで駅員をしているアキラです。


「アキラー!」


向こうから手を振って走ってくるのは我らがサブウェイマスターのクダリさん。無邪気な姿にいつも職員一同、癒されています。
そんなクダリさんに俺は気に入られているようで、よく仕事中に関わらず俺の持ち場に遊びに来てしまいます。それについて同僚達から哀れみの視線やら羨望の眼差しをいただくのですが、正直俺としてはどういった反応をしていいのやら困ったものなんですがね。もちろん人に好いてもらうのはとても嬉しいんですけど。


「あれ、クダリさん仕事はいいんですか」

「うん、多分大丈夫」


た、多分って……とっても心配な返答です。きっと今頃ノボリさんがクダリさんのことを探し回っているのでしょう。ノボリさんの為を考えるとクダリさんを説得して仕事に戻らせたほうがいいんですが、前に説得しようとした際にクダリさんに「ノボリとぼく、どっちが好きなの」と鬼気迫る顔で詰め寄られ、ノボリさんが来てくれるまで迫られ続けたという苦い思い出があるのでそれは避けたい。
ノボリさんごめんなさい。


「あのさ、アキラってどんな人が好きなの?」


心の中でノボリさんに合掌しているとクダリさんが突拍子もない質問をしてきた。


「えーっとですね…、特にこういう人っていうのはありませんが、笑顔が素敵な人、ですかね」

「そうなんだっ」

「でも、」


俺が質問の答えを返すととても嬉しそうにクダリさん。漫画ならバックに花が咲いてそうなくらい。それから俺は言葉を付け足した。


「料理が上手な人にはぐっときてしまいますね」

「そう、なんだ」

「はい」


するとクダリさんはさっきまでのルンルンな様子は嘘だったかのように肩を落として暗い表情を浮かべた。


「…クダリさん?何をそんなに落ち込んでらっしゃるんですか?」


素直な疑問をぶつけてみると更に落ち込んだようで。ああ、困った。
助けを求めるように景品交換のスタッフに視線を走らせるけど男性スタッフは斜め上に目をやって素知らぬ振り。女性スタッフはにやにやとしていて…。た、助けてくれたっていいじゃないか。

「やっと見つけましたよクダリ」


そこに登場したのは救世主。助かりましたっ!


「アキラさん、またクダリが迷惑をお掛けしたみたいで」


礼儀正しいノボリさんは俺の憧れだ。申し訳なさそうに眉間に皺を寄せるその姿に慌てる俺を見るクダリさんはすごく不機嫌で。


「ぼく仕事やらない」

「クダリ」


諌めるような声色で言うノボリさん。


「我が侭言わないで下さいまし」

「ふん」


それでも言うことを聞かないクダリさんにノボリさんは俺の腕を引っ張ってクダリさんから少し離れた場所に移動し、さっきまで何を話していたのかを尋ねて、何か納得したようで今から言うことをクダリさんに言ってくれないかとお願いしてきた。勿論そのお願いを呑む。するとノボリさんは高い背を少し丸めて俺の耳元である言葉を囁いた。その時ノボリさんの吐息が俺の耳を撫でていき、擽ったくて肩を竦めてしまったのはノボリさんにばれてないみたいで安心した。


「クダリさん」


それからクダリさんの許に戻ると先ほどノボリさんにお願いされたことを実行した。

白いクダリさんのコートを皺にならないように気をつけながら握って、上目遣いになるようにしてクダリさんの目を見つめる。


「クダリさん、俺、きちんと仕事をする人が好き…です」

「アキラ…」


クダリさんとそのまま数秒見つめあう。
……うぅっ、結構恥ずかしいんだけどこれ。


「ノボリ、仕事しよう」


俺の頭をぽんぽんと優しく叩きながらノボリさんに言うクダリさんの様子に安心。どうやら作戦は上手くいったようだ、よかったよかった。


「仕事終わったらあそぼうね」


それからノボリさんと一緒にその場を立ち去るクダリさんは50mくらい離れたくらいのところでこっちを振り返って大きな声で叫んでいて。
俺は苦笑いして手を振った。



「アキラー、大好きだよー!」


110909


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