怖い話 | ナノ

じゃあ俺が体験した話をするな。



「夜の訪問者」




夜の10〜11時くらいに毎日毎日家の呼び鈴が押されんだよ。でも毎回外に出ても誰もいなくって、始めは悪戯かと思ってほうっておいたんだけどあまりにも長く続く。そんな話をバンド練のときに漏らしたら今夜ゲンとマツバが来てくれるって話になったわけよ。

それから俺の家で飯食ったりくだらない話をして笑ってたりしてたら、あっという間に例の時間の間際になっていてゲンが外で見張っていてくれることになった。

暫くすると、

ピンポーン。


いつものように呼び鈴が鳴った。

マツバと俺はそっと扉を開けて外の様子を伺ったが誰もいない。

「誰か来た?」
「いや、誰も来てないよ。それに私が外にいた間、誰も家の前を、この道を通った人はいなかった」

マツバとゲンの会話に俺はぞっとした。

――ならどうしてインターフォンが鳴るんだよ。

眉間に皺がよっていたのかゲンが俺の眉間に指を置いて苦笑いをする。

「もしかして呼び鈴が壊れているのかもしれない」
「そうだといいんだけど…」
「僕が外から押してみるから中で聞こえるか聞いてみて」


マツバはそう言うと俺の頭を軽く撫で、家に入るように促した。


「押すよ」
「うん」

「…聞こえたかい?」
「聞こえなかったよ」

マツバは呼び鈴を押したらしいけど何も聞こえなかった俺とゲンはやっぱり故障かなと笑った。

そしてその日はそのままマツバとゲンには俺の家に泊まってもらった。
次の日は休日だったから俺達は家でそのままテレビを見たりしてゆったりまったりして過ごしていた。


「ただいまー」

久しぶりに兄貴が家に帰ってきて、ゲンとマツバは兄貴に挨拶してた。この2人は兄貴に会うの初めてじゃないから俺もほうっておいたんだけど、昨日の夜の話になったので俺も会話に参加した。

「兄ちゃん、うちのインターフォン壊れてるぜ」
「…?壊れてはないぞ」

――は?

俺とゲンとマツバは同じことを思っただろう。
壊れてないってどういうことだ。3人でアイコンタクトを取っていると兄貴も不思議に思ったらしい。

「ただ電池が入ってないだけだろ。ちゃんと見なかったのか?」

俺達は慌ててインターフォンの本体を見に行った。
すると兄貴が言うとおり確かに電池は入っていなくて、中身は空だった。


――――――――――

あとがき。

まさか本編より先にお兄さんを出すことになるとは(笑)お兄さんについては本編で登場したとき詳しく書きます。
きっとお兄さんは呼び鈴の電池を変えようと抜いて、入れるの忘れてたんですね。