怖い話 | ナノ




近所の女の子がやったんだって。
その話をするね。


「ひとりかくれんぼ」


ひとりかくれんぼって知ってる?ぬいぐるみに名前付けてやる降霊術の一種なんだけど、正しい方法でやると色んな怪奇現象が起こるっていう一種の都市伝説なんだ。
準備としては名前をつけたぬいぐるみと米と赤い糸。それから塩水。ぬいぐるみの綿とかビーズの詰め物を抜いて米と自分の爪を切って入れ、赤い糸で縫って余った糸はぬいぐるみに巻きつけて結ぶ。
まあこんな感じで始めるらしいんだ。何で知ってるかって?よくその子が話してたんだよ。

それで女の子は親が旅行に行っている間にこっそりやってみたらしいんだよ。ひとりかくれんぼ、を。
午前3時にぬいぐるみを風呂場に持って行ってこう言った。

「最初の鬼はトウコだから」
「最初の鬼はトウコだから」
「最初の鬼はトウコだから」

それから水を張った桶に沈めて、照明をすべて消してテレビだけを砂嵐の状態で点け10秒数えてから、風呂場に戻ってカッターをぬいぐるみに突き立てた。

トウヤ、見つけた」
「次はトウヤが鬼だから」

女の子は事前に用意していた塩水の入ったコップを持って決めた隠れ場所に身を潜める。

暫くして不思議なことに家には自分しかいないはずなのに、足音がし始めた。

――本当に怪奇現象が起こった!

実際に起こった心霊現象に女の子はとても喜んだ。けど、足音は段々女の子が隠れているクローゼットの方に近づいてきた。
歓喜と興奮に胸を高鳴らせる女の子!
嗚呼、愚かなことでしょう…!
……ごめんね、ちょっと熱が入っちゃった…あはは。

そして女の子は気づいた。
近づいてきたのは足音だけじゃない。何かが暴れているような音もだということに。
瞬間、女の子は凍りついた。

――これは尋常じゃない。

先ほどの浮かれた心は消え去り恐怖が彼女を支配し、終わらせたいと思わせた。
しかし非情にも音はもう自分の隠れている部屋まで入ってきていたのだ。
友人に助けを請おうと自分のCギアを開いて時間を確認して愕然。
ひとりかくれんぼを始めてそんなに時間が経っているわけがないのに、4時55分を指していた。

このひとりかくれんぼと云う儀式、始めてから2時間以内に終わらせないといけないとされている。

そして女の子は思わず、小さく、小さく、悲鳴を上げてしまった。

暴れているようなガタガタという音は止み、足音も止み。
家の中を静寂が包んだ。

気 が 付 か れ て し ま っ た 。

女の子は塩水を口に含むと転がるように隠れているクローゼットから出て、風呂場に向かった。
ぬいぐるみを探して、コップの残りの塩水、口に含んだ塩水の順にかけて「私の勝ち」と3回唱えれば終わらせることが出来るからだ。

そして風呂場に無我夢中で駆け込んでぬいぐるみを沈めたはずの桶を覗き込んだ。
が、目的のぬいぐるみはいない。
ぼろぼろと涙が零れる女の子。

――なんで、ここに絶対にいるはずなのに!

その時、風呂場の脱衣所から物音がする。
女の子はびくりと肩を揺らして後ろに後ずさり、怯えた様子を見せた。

トウコちゃん、」
「見ーつけた」

女の子の前に立ってそう言うと視界は暗転。
それからその女の子が動いているのを見た人は誰もいないんだって。

















…………ん?じゃあなんで僕がこんな話を知っているのかって?


さあ、

何でだろうね。


――――――――――

あとがき。

空白部分が多くて読みづらかったかと思います、すみません。
実はあの空白、ドラッグすると文字が読めるようになっていますので、何て書いてあったのか気になる人はやってみて下さい。

また、この話ではひとりかくれんぼに使ったぬいぐるみをどうするのか書いてないのでここに記述させていただきますが、最終的にぬいぐるみは燃やして処理する必要があると言われているようです。


ひとりかくれんぼはずっとトウヤで書きたくて、仕方なかった話です。去年友人からひとりかくれんぼというものがあるということを聞いて興味を持った私は色々調べてたんです(笑)それから夏場になったら書こうと決めていて、他にも怖い話を漁っていました。その漁った話をトレーナーの皆さんに語ってもらい、皆様に少しでもこの暑い夏を涼しくなっていただけたらな、と思っています。

また、ひとりかくれんぼのやり方については某掲示板、ウィキ○ディア様を参考にさせていただきました。