夜、ホウエン遠征時の報告書を纏め終わったのでアポロさんに提出しに行こうと誰もいない廊下を歩く。
すごく静かな廊下に私のブーツのヒールがカツカツと鳴り響いた。

そのようにして廊下を少し行くとある人物がいるのを見つけた。

「ランス」

名前を呼ぶと僅かに目を丸くした後、ランスは一呼吸置いてからいつもの調子で話し始めた。

「おや、もう帰ってきていたのですか」

「昨日の夜にね」

「ならばこの忙しさは少しは緩和されるということですね」

「どういうこと?」

「まともに仕事をこなす貴女がいないとその分、私の班の仕事量が多くなるということですよ」

やれやれと肩を竦めるランスに、そうなんだと言うと、そうなんですと返ってきたので、ふと思ったことを投げ掛けてみた。

「ってことはランスは私が帰ってきてくれて嬉しいってことだよね?」

するとランスの眉間に皺が寄ったと思えば、すぐに顔を逸らされる。

「そうは言ってないです」

つんけんとした返答に私はアテナさんがよく私に向けるようなにやり顔をしてやった。

「ランスくんツンデレ乙ー」

「っ、はぁ?!」

少し裏返ったような声をあげて私に向き直り、腕を組んで睨み付けてきたけど全然恐くない。

「ランスって昔からそうだよね」

含み笑いをしてやればランスは私の頭を鷲掴みにするとぐりぐりと回し始める。

「だ、れ、が…い、つ…!そんなことをしたんです」

「ごめんー」

ランスとこうして話すのは久しぶりだったからか、自然と私もランスも笑みが溢れた。





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