「なに寝てんだ」
ベシッという音と頭に痛みで意識が浮上。眉間に皺を寄せて痛みを与えてきた人物──私の頭を叩いた人物を見上げるとその人のトレードマークならぬトレードカラーの紫色が映った。
「っ、ラムダさん」
「ほら、俺様がこの間お前に渡した書類はもう仕上げたの?」
そういえばそんな物もあったなとデスクの上に積まれている書類から目当てのものを探しだす。
「はい、これで宜しいんですよね」
「おお。上出来、上出来」
パラパラと紙を捲って中身を確認してから、ラムダさんはにやりとニヒルに笑った。
ラムダさんはロケット団の創立メンバーで古株。今も幹部を務めている凄い人だが、分け隔てなく誰とでも仲良くできる人なので団員皆から好かれている。ラムダ班の人が羨ましがられ班を変わってくれと泣き付かれるのは日常茶飯事。団内では有名な話だ。
「それにしてもアズサが居眠りなんて珍しいじゃねえの」
「疲れがたまってるの」
今では私もそのラムダさんと並んで仕事ができる立場まで来ましたが、ラムダさんのように上手く団員の皆さんを纏められているかは今でも自信がありません。
「ホウエン遠征の疲れがまだ残ってんだろ。ちょっとはゆっくりすれば良くなるんじゃね?」
こんな気配りも然り気無くできる人ですしね。……流石です。
け ど !
「まあ帰ってきてもアポロのやつとなかよくやってんだろ?」
にやにやと!
こういう下世話な詮索が残念なんですよ、この人は…。
「私のことはいいですからきちんと仕事してください!話題のアポロさんが嘆いていましたよ」
「はいはい、頑張りますよー」
「本当にわかってるんですか」
やれやれと肩を竦めて首を振るジェスチャーをすればラムダさんは愉快そうに声を出して笑った。
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