ペンが紙面を走る音だけがする一室の戸棚には多数のファイル。机上にはパソコンと書類の束が置かれていた。それだけならただの仕事部屋だと言えるが、そうも言えない。その部屋はとても広い部屋で、赤い絨毯が敷かれており装飾品の一つ一つに高級感が漂っている。そんな部屋を平社員が使えるもなく。まさに社長室のような豪華さ。


「失礼します」


これまた大きな扉からノックの音がし、少女が室内に入室する。
少女の纏っている服は白と黒で統一されており、腰のベルトには赤と白の球体――モンスターボールが数個ついていた。


「アズサ班無事任務完了し、捕まえたポケモン達は先ほど倉庫に運び込みました」

「ご苦労でした。今回の任務は長期の物でしたから、部下達をゆっくり休ませてやりなさい」

「わかりました」


部屋の主にぺこりと頭を下げ出て行こうとする少女アズサに青年アポロは苦笑を漏らした。


「アズサ、待ちなさい」

「なんでしょうか」


くるりと再びアポロに向き直るアズサの表情を見てまたふっと笑った。
何故ならその顔は寂しさでいっぱいだったから。


「もうすぐ私も仕事が終わります」


そう言ってやれば花が咲くような笑顔になるアズサ。
アポロもアズサもころころと表情を変えるようなタイプではない。


「お茶淹れますね」

「お願いします」


けれど。


「お帰りなさいアズサ」

「ただいまアポロさん」


今は2人だけの空間だから。







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