あの後僕はミクリに慌てて連絡をとった。
あの女の子の名前は何て言うのかから始まり、恋人はいるのかまで聞くと、ミクリは「ダイゴが石以外にそんなに必死になるなんて珍しいね」と言って笑った。
確かにその通りだ。 石以外にこんなに興味を持ったのは初めてかもしれない。
あの子を見た瞬間衝撃が走った。 途端に心臓ばくばく。 顔に熱は集まるわ、手に汗握るわで。 僕は所謂一目惚れってやつをした。
名前はアズサちゃん。 学年は…まぁわかっていたけど、僕らと同じ。 ミクリと同じクラスで、読書を好むミクリと気が合うらしい。要するにアズサちゃんも読書好き。 部活は入っていなくて、バイトをしているらしい。 恋人はいないと思うとミクリは言っていたけど真実は不明。
ミクリの話しからわかったのはこのくらい。
……で、僕が思うに行動あるのみ。 こうして僕はアズサちゃんに近付きたいが為に図書室通いを始めた。自分で云うのもなんだが、物凄く不純な動機だ。
「アズサちゃん、ご一緒してもいいかな?」
「どうぞ」
適当な本を手に取ってアズサちゃんが座っている向かい側に僕も座る。図書室特有の大きめの机の距離が今はもどかしい。
アズサちゃんは青色のハードカバーの本を広げ本の世界に浸っているようだ。
「あのさ、アズサちゃんってさ」
他の人の迷惑にならないようにと最小限の声量で問いかける。
「すっ、好きな人とか…付き合ってる人とか…いないの?」
少し声が震えてしまった。 いるって言われたらどうしよう。そう思うと堪らなく不安になった。
しかしアズサちゃんの行動は僕の予想を上回る。
「…何故ダイゴさんに答えなければならないんですか」
冷たい声色だった。 こう返されるとは想定していなかった。確かにあまり親しくもない、寧ろ大して話したこともない奴に何故プライベートな話しをしなければならないのか、と云うアズサちゃんの主張は最もで。
だからこそ僕も言葉に詰まってしまい、この時ばかりは眉尻を下げるしかなかった。
刺さる言葉
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