「「あ、」」


まあ少女漫画で有りがちなパターン。
放課後の図書室で本を選んでいたら偶々同じ本を取ろうとした人がいて同時にハッとする。今まさにそんなシーン。


「すみません…私は借りないのでどうぞ」


さっと手を先に引いたのは女の子の方だった。申し訳ないとは思ったが、明日の選択授業で必要だったので有り難く譲ってもらうことに。

女の子のリボンを見ると青色をしている。
うちの学校は学年によってリボンやネクタイの色が違うので、すぐに学年がわかった。

──僕と同じ学年か。


「あのー…」


小さな困ったような声色で声を掛けられ自分の意識が飛びかけていることに気付き、慌てて笑顔を張り付けて取り繕う。


「なにかな?」


この時初めて女の子の顔を見た。

瞬間、びしりと身体が硬直。


「いえ、ミクリのご友人のダイゴって方ですよね?」


ミクリの友達かって?そうだよ。君もミクリと親しいのかい?
……いつもならこう切り返しただろう言葉達。

でも僕は間抜けにも、ああ、と返すだけで精一杯だった。

急に喉がカラカラに干からびてしまったかのように。身体が石化してしまったかのように、僕はそれ以上言葉を発することも動くことも適わなかった。













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